人気ショップ、チューナーに共通している事に気がついた。それは“現場を知っている”という事。決して上辺だけでなく、現場にいる者が欲してる事や、気持ちを知っているという事。
Garagemakはストリートのみならず、サーキットでレコードを刻むシーンも確実に把握しているようだった。
ファーストコンタクト
Garegemakは雑誌など、メディアへの露出も多く、その存在を知っている方も多いであろう。本記事ではなるべく違った角度でmakの現状をお伝えしたい。
取材日、makが新製品をリリースするとの事で、その製品の紹介とショップの紹介を兼ねて長野まで訪れた。
お忙しいのにも関わらず、取材に応じていただいたのは店長の宮川さんだ。「好きにどんどん撮ってください」と大切な作業場をおしげもなく案内してくれた。
作業場
メインとなる作業場は、数台のリフトがあり従業員の方が作業をしている最中だった。場内にはmakのエアロ“Revolutionシリーズ”を組んだNISSAN系の車両が複数おかれており、その中にはよく目にするデモカーもあった。
メディアで見かけるのはNISSAN系が多い為、てっきりNISSAN系が主な取扱車種と思っていたが、「あっ?そうですか?トヨタ1jzとか2jzとか、色々やってますけどね」と逆に驚かれていた。
リフトの他には、応接ルームやパワーチェックができるシャシダイがあったり、溶接室、エンジンを組む部屋などがあり、チューニング好きには見てるだけで、たまらない雰囲気だ。また、エンジンやミッション、タービン、専門工具など多数置かれており、気になって仕方がなかった。
垣間見る日常
従業員の方とも、少し会話をさせてもらい、気を許してもらえたのか、makの日常を見れた気がする。なかでもタービンを加工している様子が気になり聞いてみると、90ツアラーにシルビア用のタービンを付ける為の加工をしているとの事。こうしたマニュアルにないような作業は、どのようにそのノウハウを得るのだろう?
「今までやった、その経験とか、あとは自分の車につけてみたり」
チューニングに関するノウハウは、雑誌やWebだけでは分からない事も多い。例えば、取付位置、締付トルク、耐久性など細かな事が大切だったりする。チューナーは、やはり自身の経験やノウハウの蓄積の上に成り立っているのだろうと感心した。
Garagemakのはじまり
場内の撮影が終わり、応接ルームにて宮川さんにお話を伺った。まずはmakの始まりについて。
「元々、バイクとクルマの改造が大好きで、僕が兄なんですけど、15歳とかそのくらいからFRPいじったり、パテいじったり、塗装したりとか、そういう道具を家に揃えて。その後、板金屋とかでも働いてたんですけど。弟は弟で整備の方やってて、まぁ、同じクルマいじったり、そういうのやってて。たまたまR32のGTRが現行の時くらいに買って。衝撃をうけてちゃって。これをいじりたいなぁって。業者になれば、部品も少しは安く手に入るじゃないですか?その時は、もう、給料はいらないけど、自分らの車を造りたいなっていうのが、すごくあって。それが始まりですね」
はじまりは、バイクやクルマ好きの青年が趣味で始めたカスタム。それが今では海外でも注目されるショップになった。カスタム好きな方には夢のある話だ。
以後、風間など幾つかの場所を経て、現在の青木島に落ち着いた。出発当時からボディメイク、チューニングショップというのは、今でも変わらないようだ。
「ここは11、12年経つかな。元から色んな車扱いますけど、当時はシルビアが多かったですね。当時から一般整備も車検もやったし、耕運機持ってきて直してくれってのもありましたよ。お店としては種類にはこだわってないですね」
作業内容の概要、顧客の方向性
Garagemakはボディメイク、塗装、エンジンチューニングから板金、車検など、すべて自社で行っている。従業員、アルバイトの方も数人いて、ドリフトやタイムアタックまで、車種やジャンルを選ばず対応しているそうだ。
「まぁ結局、足回りのセットアップ違うとか、冷却系の持っていき方の違いとかが違うだけで、基本的には、チューニング自体はそんなに変わらないですね。ドリフトもグリップの方も同じくらい来てくれますね」
「デモカーの歴史?シルビアがちょうど盛り上がってくる頃に、13シルビアやってた感じですね、ちょうど、スーパーラップが始まったばっかの頃ですね。当時、間瀬サーキットも、サンデーレースカーショウみたいなのが流行ってたんで。あとは14、15シルビア、R32GTRとかね」
評価される理由
冒頭にも書いたが、Garagemakはメディアで多く取り上げられ、その技術力や独創的なエアロ、評価の高さを知っている人も多い。では、そういった技術力や他者からの評価というのは、どのような経緯で得られるのだろうか?
全てではないが、その一部にデモカーであるZ33について話してくれた。きっかけは、宮川さん自身は走らないのですか?という質問からだった。
「弟が社長なんですけど、弟の方が速いんで(笑)昔はシルビアとか32GTRで走ってましたよ。メカニックは弟がやって、コンピューターは僕がやって。本チャンでタイム出すって時は、プロのドライバーに乗ってもらってますけどね」
「毎年、富士でHKSのプレミアムデーというのがあるんですけど、富士でタイム出しましょうって走る企画で、全国からHKSに選ばれたショップが集まるんですね。そこでZ33でタイム出したんですよ。とりあえず、Z33の中では、富士で一番時計。コースレコード持ってます」
「レースがある時は毎回エアロとか、パーツとか変更して、その結果を製品にフィードバックして。製品化して。実際にはチューニングする人もいれば、エアロだけを買ってくださる人もいる。自分の考えなんですけど、自分の走らせる車は、自分のカッコイイように作って走らせたいですね」
究極まで高められたZ33
「Zに関してはHKSがスーパーチャージャーを真剣にやりたいからって話聞いて、じゃあスーパーチャージャでいいタイム出そうかってのが一番最初の目標で。それが6、7年前ですね。で、もうタイムが限界ってところまできて(現在はターボに仕様変更)」
「うちで色んな事やって、パワーも出すだけ出して、エンジンもどうやったら壊れるとか、どの部品が壊れるとか全部把握して。で、お客さんには上限はこれくらいにして、こうやらないと駄目だってフィードバックして。本当に色んな事やって。やり尽くしましたね」
かなりの時間と費用、そして情熱を注ぎ込んだ結果を、お客さんにフィードバックしている。これが長年お店を構え、評価を得る結果に繋がっているのではないだろうか。
本当のコンプリートカー
「HKSの商品のスーパーチャージャーとしてやりつくしたって形ですよね。NOSとか使わないで、素のままのスーパーチャージャーの能力としてやりつくしたって感じです。最初はエンジンノーマルで、スーパーチャージャー積んで。徐々にエンジン内部に手を入れて、スーパーチャージャーのサイズ大きくして。で、スーパーチャージャー付けることによって、ここが駄目とか、そういうのクリアして」
よくコンプリートカーという言葉を聞くが、本当のコンプリートカーとはすべてをやり尽くした上で、中身も充実したマシンであるべきだと思う。
エアロはどのようにして生まれるのか?
ガレージマックのエアロRevolutionシリーズといえば、国内外問わず人気のエアロだ。このエアロはどのようにして生まれるのだろうか?そもそも、どのように、誰がデザインや設計を行っているのか聞いてみた。
「僕です(宮川さん本人)。空力とかもあるんですけど、基本的には僕がカッコイイと思ったものです。頭の中で出来上がってるんですよ。だから、自分のほしいエアロを作った感じですね。これで富士走ったらカッコイイなっていうのが想像して」
「ただただ派手って訳じゃなくて。いかにカッコよく綺麗に見せるかっていうのは、15歳の頃から考えたんで」
「コンセプトは実はないですね。時代に合わせて、日本製のパーツは使うんだけど、日本じゃあんまりこんな事やらないだろうとか。日本じゃこういう見せ方をしないだろうというの事を考えていますね」
宮川さんは多くのお客さんと接し、レース活動の中で感じたことや、海外トレンドを加味した上で、誰もやっていないような事に挑戦している。
ただ、シリーズの中には、完全に宮川さんのセルフプロデュースという訳ではなく、お客さんが求める物を形にして製品化しているモデルもあるようだ。それについては、近いうちにストリートシックで紹介できればと思う。
Garagemakは「海外のクルマ造りも、もちろん意識している」という言葉の通り、海外で行われているカスタムやチューニングのトレンドにも目を向けている。
この仕事をやっていて嬉しい事はなんですか?と尋ねた際に「自分とこの造ったエンジンルームだの、エアロだのをスゲエって言ってもらった時ですね。あと、海外の評価が高い時。やっぱり海外は目が肥えてますからね」という会話があり、海外までアンテナを伸ばし、トレンドや情報をキャッチしているようだった。
チューニング初心者に向けて
カスタムとチューニングの境界線は人によって少し異なるが、その話は別の機会にして「かっこいいチューニングカーに乗ってみたい」という初心者に向けてアドバイスをもらった。
まず、純正の状態でカスタムするとしたらどうすればよいだろうか?
「まずはシャコタンですよね。アルミ・タイヤ、車高調。僕もどんな乗ってもローダウンから始まるんで。僕の場合そんなベタベタじゃないですよ、やっぱり品がある程度で(笑)」
その次のステップアップとして、ブーストアップするとしたら?
「仮に15シルビアだったら、エアフロ変えて、コンピューターいじって、純正書き換えでも、パワーFCでもVプロでも予算に合わせてやれば、車は激変しますよ」
それは30万円以内でいけますか?
「Vプロ使うとちょっと厳しいですけどね。純正書き換え、パワーFCのセッティング料でだいたい8万5000円。Vプロは15万円からになっちゃうんですけど。セッティング料決まってるんで、それ以外はついてるパーツだったり、新しいパーツつけるかってところ。15シルビアだったら300馬力程度(ノーマルタービンでのブーストアップの際)なので、燃料ポンプは大丈夫かな。でも、一回も変えてなかったら、きびしい。そうじゃなくても普通に乗ってても、シルビアだったらトラブル出るんで。13、14は必須ですね」
「ただ、チューニング入る前に、メンテしないといけない車両も多いですね。まずはちょっと壊れてるところ直したほうが良いよって」
32GTR スカイライン
長いインタビューと撮影の後「ぜひ撮って欲しい車がある」と作業場の奥に案内された。
そこにあったのはエンジンルームの開いた32GTR。
聞くと2年前ほど前から、手をつけはじめたマシンで、今一番目玉となるレストア、チューニング内容が詰まっているとの事。ちなみに弟さんが所有するらしい。
「普通に街乗りで快適に走れるようにしています。今32GTRもコテコテより綺麗に乗りたい人も多いんで、そういう人達の見本になればと思って。足はTEIN、キャリパーはR35の入ってますね」
トータルの仕上がりとしては“ストリート仕様”になるそうだ。
下回りを覗くとメンバーから、細部に渡るまで塗装されている様子だった。
「あぁ、これ全部バラして塗ってるんで。時間空いた時にコツコツ造ってますね。最初からいじってあったんですけど、古いいじり方だったんで。今流のチューニングにして」
スペックについて
HKSの2.8Lボアアップkit、GT3-RSタービン。ナプレックのビッグバルブとサージ、50πのスロットル。
「ストリートからアタック両方できるように。まぁストリートに近い仕様ですかね。こだわっているのが、シルバーとブラック以外なるべく使わない。その他、室内とかは当時のままで」
それにしても美しいパイピングで、エンジンルームが光っているように見える。それでいて、外装や内装は“当時物”という、何ともシビれる仕様だ。クロームなパーツや、パイピングの溶接箇所が好きな方にはたまらないだろう。
インジェクターの容量を聞くと1000ccで1000馬力対応との事。
「700馬力くらい出す予定ですね。ミッションはR34のゲトラグ6速積んでいます。ワイヤータック?ある程度ですね。まぁ、GTRなんで、ある程度隠せられる範囲が決まっちゃうんですけど」
700馬力と聞くと、それストリート仕様なの?と感じてしまうが、味付けは下から回る乗りやすい仕様になるとの事。
「今、GTR乗ってて、もう、ちょっとね、塗装とかもくたびれたとかって思ってる人も多いと思うんですけど。こういう味のある車乗ったほうが面白いですよね。それで、制御とかはね、新しい部品使って」
世界観があるチューニングショップ
作業場での取材、新商品の撮影と長い時間お邪魔してしまったが、ガレージマックは独自の世界観を持ったショップだ。ただお客さんの言われるがまま作業をする訳ではなく、ガレージマックが造るエアロやチューニングに魅力を感じ、ショップに訪れるお客さんを牽引しているように感じた。
取材時には気が付かなかったが、記事を書きながら想像している事がある。
兄弟が、お店を出すきっかけになったのは32GTRだった。GTRに魅了され始めた小さなショップが、時を経て成長し、海外でも支持されるショップになった今、再びGaragemakの技術の粋を集め、32GTRをレストア・チューニングしているというのは何だか感慨深い。
そこには、2人にしか分からないドラマがあるのかもしれない。
Garagemak ガレージマック
〒381-2242 長野県長野市青木島町青木島乙276
営業時間:AM10:00-PM8:00 (火~土)、AM9:00-6:30 (日)
定休日:毎週月曜日TEL:026-254-7333
FAX:026-254-7334
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