SRエンジンといえば、チューニングベースのエンジンとして定番的な存在。ここ数年は“タマ数が少なくなってきた”と、チラホラ聞くようになったが、メンテナンスしやすい上に、多数のアフターパーツやノウハウがある為、未だ愛好家たちが多いのは確かだ。
先日、数台のSR車が集まる機会があったので、SRエンジンを見比べてみたい。
後期仕様のS14シルビア
カメラマンをしている、ふじぱんさんのS14シルビアは、前期のオートマ車を載せ替えて後期仕様にしたマシン。
先月オイルフィルターの移設と、オイルクラー(HPIの13段)をしたばかり。吸排気、インタークーラー、不明マニなど、一見すると程度が良さそうだが、この状態にするまでに費用を費やしたようだ。
「修正、修正で直すところ直している段階で、前のオーナーさんの状態のままなんで。やってあるのが、エレメント移設と、バッテリー、ヒューズボックス移設と、オイルクーラーをつけたくらいですね」
購入した際の状態があまり良くなく、牽引フックが剥がれてたり、純正のソレノイドバルブがついてなかったりしたが、よくやくリセットできたようで、今後はサーキットを走れるように仕上げていくとの事。
SSタービン、2,009ccのS15シルビア
「実は2,009ccです。オーバーホールする時に、純正ピストンだと、もうそのサイズがないもんで、エクストレイルのやつになるよって事で。ボーリングするのに、シルビア純正だとオーバーサイズが、微妙にないらしくて。強度もエクストレイルのがいいらしいです」
ナベビアさんのS15シルビアは、カザマオートのブリーザータンク、オイルクーラー、サードのレギュレーター、オーリンズの車高調、吸排気など一通り手が入っている。インジェクターは純正のままだが、そこにHKS-SSタービンでブースト1.0。扱いやすい300馬力程度の峠仕様になっている。
タコ足は割れて純正に戻しているが、その他のパイピングなどはワンオフでエアフロレスになっており、F-CONで制御している。
SSタービンを組んだ際、コンピューターのセッティングをせずにブーストコントローラーだけで1.0にして走っていたが、オーバーシュートによりピストンリングが落ちてしまい。エクストレイルのピストンを流用してオーバーホールをしたそうだ。
MOONFACEのMFRイージースロットルは、ちょっと進みたい際や坂道発進が楽になったらしい。
「普通だったったら、踏んだら踏んだだけ開くじゃないですか?その曲線が変わってます。すごーく微妙な調整が楽になります」
峠が楽しそうな仕様である。
メンテナンス主体の美車、S15シルビア
夜行者さんは、その昔S13、AE86、KP、EPなどで走り回っていたそうで、お子さんが大きくなった為、S15シルビアを購入した。
しかし、購入後すぐに1、2番が駄目になり、半年は修理で寝ていたそうだ。さらに青信号で突っ込まれて、3ヶ月ほど寝ていたらしい。
その甲斐あってと言えば失礼になってしまうが、インタークーラー、ボンネット、ヘッドライト、マウント交換などをリフレッシュし、綺麗な状態で乗ることが出来ているようだ。
「これしか、本当趣味ないもんで(笑)まぁ。子供が乗りたいっつったら嬉しいんですけど、ちょっとクルマに興味がないもんで。興味があったら良くして、渡すかなと思ってるんですけどね」
これからはメンテナンス主体で、乗っていくそうだ。
GT仕様のブーストアップS15シルビア
大阪にあったシーケンシャルというショップのフルエアロを組んだ、JさんのS15シルビアはブーストアップ仕様。
ランボルギーニのパールグリーンにオールペンされた、片側+400mmのワイドボディはGTカーを連想させる。
KOYOのラジエター、BLITZのインタークーラー、オイルクーラーなどを強化し、ブースト0.9で280馬力とグリップ、プラスα街乗りを楽しめる仕様になっている。
「休みの日に1000kmのドライブもけっこう平気なんで」と、とにかく運転する事が好きなようだ。
「壊れたら直すプラスαで何かやっていこうかなって考えていて。なんで、ミッションもブローした時にNISMOの6速のクロスに載せ替えて」
チューニングやカスタムについては、ロールケージやER34スカイラインのキャリパー、オデッセイのローターなど、走る事を念頭に置き、必要な場合、あるいは壊れた際にテコ入れをしているそうだ。
2.1L、GTⅢ-RSタービンのS15シルビア
「2.1Lでコンロッド、ピストンを変えてます。あとは、87φピストンなんで戸田レーシングのパワーライナーキット入れてます」
2.1Lにボアアップされた、和さんのS15はオートマNAからの載せ替え車両になる。外装はシンプルだが、製作途中というエンジンルームを覗かせてもらった。
GTⅢ-RSタービンに100φのワンオフパイピング、R35のエアフロ、セクションのタコ足、サードのインジェクター740cc、トラストのサージタンク、32GTR用のHPIのインタークーラー、カザマのブリーザータンク、NA用のスロットル(少し径が大きい)、アクチュエーター(キット物)、ABSは取り払い、バッテリーはトランクへ移設している。
これらをパワーFCで制御し、ブースト1.2で300馬力ほど出している。
「最終的には1.5かけて430馬力狙い。今後ですね。補給類は全部それ用にしてて、GTR用のインタークーラーとミッションもニスロクだし」
今後、さらなるパワーアップを見込んで準備中との事。32GTR用のインタークーラーはサイズが違う為、パイピングの取り回しが面白い。
サージを変えてるという事は余程上を狙っていくのだろうか?今後が楽しみである。
和さんとエアフロの話になった。本マシンにはR35のエアフロをHPIの変換キットにて装着しているのだが、35のエアフロは400馬力(35GTRは2つ付いてるので1つあたり)までしか対応できないらしいので、パイピングも80φまでしか対応してない。そこでこんな工夫をしているそうだ。
「100φなんですけど、細くしてるんですよ。入り口が100φなんですけど、絞ってますね」
エアフロについては、500馬力から上を狙うならZ32にエアフロを使うほうが良いが、多くはDジェトロ仕様にするかと思う。Z32のエアフロは高騰しており、エアフロを入れるのであればR35用が無難といった感じだろうか。
78ワークスのデモカーS15シルビア
カヲルさんのS15シルビアは、京都にある78ワークスのカタログ車。今回はエンジンにフォーカスしているので、ボディメイクについては機会があれば紹介したいが、かなり緻密に造り込んでいる。
自身でFRPによる整形や、ダクトの自作など造形に対する工夫が物凄い。また、これほど“ツライチ”も珍しいくらい徹底されていて、どうやらキャリパーの設計図を取り寄せて、それに合うホイールをセレクトしている。
そういえば、春に行われたSRミーティングでもストリートシックが、カメラに抑えていた。
エンジンに関しては、これから手を入れていくそうだ。
「今は、基本ブーストアップ仕様だけですね。まだついてないですけど、アルトラックのエキマニと35のエアフロで、今度ちゃんとセッティング取ろうと思ってます。今は純正の鋳マニが入ってますね、一応ブーストアップやってるんですけど、エキマニを変えるついでにエアフロとかも新しくしようかって感じで。準備はできてて、ショップさんを探しとる最中ですね」
オーテックNAエンジン搭載S15シルビア
ビッツのピンクにオールペンされたFさんのマシンは、オーテックのエンジンが載ったドリフト仕様のNAシルビア。
電ファンはショップおすすめの不明ファン、タコ足はオーテック純正のフジツボ、TRUSTのプーリー、ウルトラプラグコードなどNAならではのカスタムがされている。
「最初はターボ欲しかったんですけど、NA乗ってるうちに面白くて」
絶対的なパワーはターボ車に劣るかと思うが、レスポンス重視の高回転エンジンが載ったNAシルビアは魅力的だ。Fさんは以前にもS14のQ’Sに乗っており、NA車両を乗り継いでいる。
オーテックについては、ボディがスペックRと同じで、エンジンはピストンや圧縮が変わっており、馬力も通常より出てるそうだ。
「ピストンとかを新品にしてもらって、サージタンクはエンドレス。13用だったかな?それを加工してつけてもらって。エアフロレスにして。それくらいですかね」
今後はメカチューンを計画しているらしく、足回りを煮詰めたらエンジン製作に入るとの事。
「ドカンという、ここぞというパワーはないんで、そこは苦しいんですけど、全開にしとる時間は長いんで。レスポンスいいし、壊れないんで、そういうのが好きでずっとNA乗っとるんです」
三者三様のSRエンジン
本記事でお伝えしたSRエンジンのチューニングやカスタムはほんの一例だが、ストリートの事情をよく表した7台だった思う。
最近の手が入れられないエンジンや、純正で完成してしまっているエンジンも時代の流れかと思うが、オーナーが気軽に自分好みにカスタム、チューニングできるエンジンという魅力は、この先も多くのクルマ好きのニーズとして絶えないのではないだろうか?