カスタムカー、チューニングカー総合マガジンのストリートシック

" From the streets of Japan " 
STREETCHIC provides information about car customization and tuning that takes place on the streets of Japan.
アートエンジンの90クレスタ

アートエンジン流、車高調セッティングについて聞く!!所有しているJZX90クレスタのこだわりポイントとは

STREETCHIC > STORY > DRIFT > アートエンジン流、車高調セッティングについて聞く!!所有しているJZX90クレスタのこだわりポイントとは

アートエンジンの作業場、エンジンブロック、クランク
前回の記事でART ENGINEの坂本さんの人物像に触れてみたが、本日はエンジンスワップやドリフトについて、さらに掘り下げてみたい。

チューナーの味付け

作業場に気になるエンジンブロックが置かれていた。

「当時物の24U、RBのN1ブロック。強度が違うんで、本気でやる人は使うんですよ。800馬力くらい出るようには作ろうかなと」

チューナーの作業と言えば多岐に渡ると思うが、その一部を垣間見る事ができる。

「純正ブロックだとCとか番号が打ってある。そして純正クランクにも番号がある。これで適合表を見て、そこに何番のメタルを入れるっていうのが分かるんですけど、それはノーマルの組み付けなんです。で、これは社外なんで、自分で合わせるしかない。そこの味付けがチューナーの仕事」

定規のように見えるプラスチゲージを使って、クリアランスを計測し、どんなメタルを入れるのか決めるという。もちろん、その“味付け”は坂本さんのセンスだったりする。

アートエンジンの作業場、エンジンブロック、クランク

アートエンジンの作業場、エンジンブロック、クランク
アートエンジンの作業場、エンジンブロック、クランク
アートエンジンの作業場、エンジンブロック、クランク

過去の作品

坂本さんが過去に手掛けた作品は、カプチーノにロータリー、ベンツに2jz、FD3Sにロードスターのエンジン、ジャガーにV8を載せたり、博物館にあった映画マッドマックスに出てきたインターセプターを動かせるようにしたり、とにかくスケールが計り知れない。

「はっきり言って器用な人なら、エンジン載せ替えるのは誰でもできると思うんですよ。ざっくりですけどセンター出して、エンジン、ミッションマウントをうまく繋げれれば、そこまではできると思うんですけど、その先なんですよ。配線を一本一本つなげないといけないし、それこそヒーターだってこっちは10πで、こっちは14πでとか。そういうのも合わしたり。エアコンホースも当然合わないし、燃料配管も逆だったり、ステアリングシャフトにタービン当たっちゃったりとか、そういうのを上手くクリアしていいクルマを造れる人ってのは、そうそういないかもしれないですね」

坂本さんのお話を聞くと、出来ないことはないように思えてくるが、スワップで苦労する事はないのだろうか?

「すべてなんですけど。うーん。外車の配線かな。国産は配線図出るんですけど、外車なんかは配線図出ないんですよ。なので、ノーマルの同じ車をもう一台用意して、全部ひっぺがして一本一本テスターあてて、どこにつながってるか全部調べて。というのをやったりするんで、かなりキツイですね」

アートエンジンの作業場、エンジンブロック、クランク
アートエンジンの作業場、エンジンブロック、クランク

逃がす所を作る

スワップするにあたり、秘訣というかコツのようなものあるのであろうか?また、メーカーや車種違いの組み合わせから生じる不具合はないのだろうか?疑問をぶつけてみた。

「何でもありなんですけど、どっかにあえて力を逃がす所を作ってあげます。カプチーノとかだったら、FCのエンジン、FCのミッションでプロペラシャフトをワンオフして、シルビアのデフくっつけて。で、シルビアのサイドフランジに、カプチーノのサイドフランジくっつけて、ドライブシャフトはカプチーノを使って、そこで折れるようにわざとして。その部品を頼めばすぐに交換できる。何でもかんでもワンオフしてるとお金かかっちゃうんで、どっかで一箇所、計算して逃げを作ってあげてますね。でも、カプチーノなんてサーキットをガンガン走ってますけど全然壊れないですよ。ブレーキもシルビアのくっついてるし」

「あと、こだわりは純正メーターを動かすこと。やっぱ雰囲気ってあるじゃないですか、メーターは極力純正を使って、ダメならそこだけくり抜いて違うの入れて、なるべく分からないようにしています」

アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔

カプチーノにロータリーを載せた際は、海外からの反響が凄かったらしいが、FD3SにロードスターのNAエンジンを載せた際は、逆の反響が凄かったらしい。

「すげえ海外から叩かれましたね(笑)たぶん13B降ろしたことに怒ってんだろうって。普通はあの2台用意したら、13Bをロードスターに載せると思うんですけど、逆の方が面白いんじゃねってことで。でも中にはすごくいいって言ってくれる人もいて、おかげ様で商売になりましたよ」

普通なら考えもしないが、確かにリッター10以上で走ってくれるFD3Sがあれば、それはそれで魅力的である。

「とにかく世界に一台という言葉に弱いですね。もう誰もやってないんでって言われるとやりたくなっちゃいます。ぶっ飛んでるのが好きですね」

アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔

嫌いだったドリフト

タイムを出す競技車両を扱っていたアートエンジンが、ドリフト車を扱うようになった経緯は、お客さんからの質問がきっかけとなったらしい。

「元々、ドリフト、舐めてたというか嫌いだったんですよ正直。で、若い子らが来て、切れ角が何とかだ、サイドがどうとか、クラッチ蹴りが何とかだ。言ってる事チンプンカンプンだったんですよ。グリップのアライメントでぶち回せば煙も出るんじゃないのって、やったこともないのに言ってたんですよね。でも、やっぱお客さんに聞かれて答えられない自分もかっこ悪いし、お客さんにもいい車乗ってもらいたいんで、せっかく来てもらってるんだったらいい車作ろうってんで、じゃオレも始めるっつって。一番はじめはS14シルビアを買ったんです。で、定常円も八の字も何もできなかったのに、いきなりタービン組んで。もう、そういうのだけは出来るんで(笑)そっからドップリはまっちゃって。何だよ楽しいじゃんっつって。で、意外にドリフトやってる連中ってチャラチャラして、イカツイやつらだと思ってたんですけど、仲良くなるといい連中ばかりで。じゃあ今度一緒に走ろうよとかやってる内に、走行会もひとクラス貸し切れるようになってましたね」

アートエンジンの90クレスタ

アートエンジンの90クレスタ

所有しているJZX90クレスタ

「オヤジの代、もう30何年前からあの色を使ってるんで引き継いでます」という黄緑と白のツートンが印象的なJZX90クレスタ。坂本さんが、趣味とデータ取りの為に使っているというマシンはどのような内容なのだろうか。マシンチェックをしたい。

まず、エンジンは2jzを3.1L化。タービンはHKSのTO4S。

「Hコンがマーレーで、ピストンがWISECO、クランク新品でバランス取りして、まぁ600馬力くらいすかね。あとはヘッドはカムくらいしか入ってないし、両方272で、サージはノーマル。スロットルを加工してレスポンス良くしてるくらいですね」

燃料系はトランク内に、コレクタータンクにツインポンプを設置し、インジェクターは800cc。これらをパワーFCで制御する。ブーストはミッションを考慮し1.6程度にとどめている。

アートエンジンの90クレスタ

アートエンジンの90クレスタ
アートエンジンの90クレスタ
アートエンジンの90クレスタ
アートエンジンの90クレスタ

J型は2層のラジエターで十分

これだけでも、ストリートレベルとしては十分だと思うが坂本さんいわく、楽しむ為のマシンとの事。こだわりとしては水周りとオイル周りにちょっとした工夫があるらしい。

「水回りはヘッドと腰下の水の回り方を変えて、強制的にエンジンから回ってラジエターを通ってっていう循環にして、オイルフィルターの所に水が回ってるんですけど、それを別々の回路にして。J型って自分の考えなんですけど、油温のせいで水温上がると思うんですよ。で、みんな大きいラジエター入れてると思うんですけど、自分は2層のペラペラのやつでOKなんで。で、オイルクーラーはやっぱ油温が上がりすぎるんで、ツインコアにしてポンプは新品にして。あとは、たいていみんな電動ファンに変えると思うんですけど、自分は油圧ファンの方が冷えると思ってるんで、そのまま1jzのウォーターポンプ使って油圧ファン使ってます」

アートエンジンの90クレスタ

しなやかに動く足

延長ロアアームは+25mm。キャンバーはフロント6.5度、リア0.5度。リアは煙を出すために出来る限り起こしている。ナックルはアートエンジンのオリジナル。仲間にだけ販売してデータを取っているという。外装はシンプルにまとまっており、サイド出しマフラーはメインコースの茂原の最終コーナーで目立つように右側から出している。

足回りはHKSの市販品を前後オーダー。設定は20kg、12kgと硬めに思えるがどうなのだろうか?

「沈みはスコンって沈んで伸びをめちゃくちゃ硬くしてます。バネはエンドレスのXコイルで20kg、12kgです。けっこう硬い感じと思われるんですけど、全然しなやかです。全然動きます。結局、市販品って減衰を固くしちゃうと縮みも固くなっちゃう。そうするとゴンゴンゴンってなるだけなんで。ゼブラ乗ってもしなやかで、路面に吸い付くようなイメージになっています」

アートエンジンの90クレスタ

アートエンジンの90クレスタ
アートエンジンの90クレスタ

ドリフト初心者はとにかく足元から

ゼロヨンやタイムアタックで成績を出すチューナーとして、これからドリフトを始めたい初心者に向けてアドバイスをもらった。

「まずはアライメントが絶対条件。みんな車高下げたらそのまんまとか、アーム組んでもピロの回し方も知らなくて、片側に寄っちゃったりとか。仲間にも言ってるんですけど。そんな目で見て変わるもんじゃないじゃないですか。でも、それがすごい大事で、そこにはこだわってほしい」

車両によると思うが、ドリフトにはパワーも必要。では、始めるにあたりブーストアップは最低条件として考えておいた方が良いと思うが、どうなのだろうか?

「パワーは二の次ですね。足こんなになっちゃってるのに、パワーとか言ってる場合じゃない。ちゃんと前向けて、車に前に出す。せっかくの車の性能を生かせないと、800馬力だ何だって言っても生かせないんで。まずは足をきちっとして。ピロとかタイロッドエンド、ボールジョイントのガタとかリフレッシュしてから。それからですね」

「例えばシルビアだと5、6万からあるじゃないですか。高くていいやつに越したことはないんですけど、安いやつでも上手く使えば。車高調の回し方ひとつでも、プリロードのバネ下のかけ方とか、その下の自由長とかも、そんな適当でいいの?ってちゃんと上から測ったの?って。吊るしで走っていいのは、ちょっと高速道路飛ばすぐらいまでじゃないですかね。競技やるなら絶対減衰も足んないし、レートも足りないし。ツアラーだと8kg、6kgとか話にならないかもしれないですね」

アートエンジンの90クレスタ

アートエンジンの90クレスタ
アートエンジンの90クレスタ
アートエンジンの90クレスタ
アートエンジンの90クレスタ

アートエンジン流セットアップ

足回りのセットアップといえば、ショップやチューナーによって考え方や設定方法が異なり、時には公開できない大切な情報でもあるが、少しだけアートエンジン流のセットアップ方法を聞くことができた。

「フルタップの場合、200mmのバネがあったとして、プリロード0ってのが、アッパーからロアシートの間隔が200mm。これが一番理想なんですよ。遊んでてもプリロード掛け過ぎも良くない」

「スコンって沈んで、ジワーって戻る足が良い。早く走れる。そういう足を目指すには、プリロード0で、例えば10kgのバネを入れて、ダメだったら、プリロードをかけるんじゃなくて、12kgのバネに交換してって感じですね。ジャックを降ろした状態(1G状態)にすると何センチか沈むじゃないですか?そこからショックの3センチくらいのストロークで全部決めています。それ以上、それ以下でもダメ(用途によって変わるが基本的には3センチ以内で決める)。

アートエンジンの90クレスタ

だから、お客さんのセッティングの時も、車高決めて、車高調のダストブーツ外して、プリロード0にして、ショックにタイラップ巻いて、お客さんの乗り方とかまったく聞かないで、少し走ってもらう。で、タイヤの減り方とタイラップがどんだけ沈んでるか分かるんで、それを基準にバネを変えて、アライメント変えちゃいます」

基本はプリロードを0状態にして、ドライバーに運転してもらい、そこでのタイヤの減り方とストローク量でアライメントを煮詰めるようだ。ポンと車高調を付け変えただけでは意味がなく、場合によっては変える前より悪くなるケースもあるかもしれない。いち車高調ユーザーとして勉強になる話だった。

アートエンジンの90クレスタ

仲間と楽しむドリフト

はじめて坂本さんにコンタクトを取った際に「ドリフトを盛り上げたい」と話してくれた。タイムを競う厳密でシビアなレース車両を手がけてきて、ドリフトの自由さと楽しさは坂本さんにとって新鮮だったのかもしれない。もちろん、ゼロヨンやフォーミュラー、タイムアタックはこれからも上を目指す。特にゼロヨンにおいては世界を狙っている。故に気兼ねなく何でも話せるという仲間と楽しむドリフトは、何も考えずに楽しめる瞬間なのかもしれない。

アートエンジンの90クレスタ

「自分らが出てる走行会って、ラインもめちゃめちゃだし、毎回通るところも違うし。でも結果楽しきゃいいんで。楽しめなければ何も始まんないんで。自分らはひとクラス貸し切っても、初級の全然できない子から、エキスパートの子まで一緒に走っても、誰一人文句言わないんで。上手い人がよければいいじゃん、下手な子を優先してあげようよ。上手い人は、それを避ける技術あるんだからって感じでやってるんで、全然揉め事もないし。結果楽しくできればいいんじゃねって事ですよ」

Written by: Maruyama
この記事のMedia crew
Photographer Tomotasu
Photographer Shu
Photographer hpg
Photographer Zaru
Videographer Lowermotion
Photographer seriole.oncle.focus
Photographer 510
カメラマンのyuta
Photographer Yuta
カメラマンのDai
Photographer Dai
Photographer Stew
カメラマンのlucky
Photographer Lucky
Total
0
Shares
You May Also Like