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アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔

1000馬力超えのドラッグマシン!!アートエンジンの製作現場にお邪魔した。日本一、スワップ、ドリフト濃すぎるレースショップ

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アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔
いったい何から話せばよいのか、一見さんお断り、ゼロヨンで日本一のスープラ、とんでもないエンジンスワップ、嫌いだったがドップリとハマってしまったドリフト。といずれも内容が濃すぎて、どれから紹介すればよいのか迷ってしまう。そんな人物とはART ENGINEの坂本さん。

アートエンジンとは

「板金から何でもやりますけど、メインはレースとかの競技車両製作ですね」

アートエンジンの坂本さんは、ボディメイクからエンジン、セッティング、足回りまですべて一人で行うという。非常にスキルフルな人物である。

逆に出来ないことはないのであろうか「精度を出すボーリングとか、クランクのバランスとか曲がりとかは、さすがに依頼しますね。あとは、プロペラシャフトも作っちゃいますし、エンジン違うのでもミッションくっつけちゃうし。まぁ何でも」と話す。また、NOSの充填機もあり、全国でも数少ないNOSステーションだったりする。

アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔

知る人ぞ知るこのショップは、一般客お断りで住所も電話番号さえ一切表に出していない。他業種では過去に聞いた事もあるが、車関連のお店で一見さんお断りのお店が成り立つのであろうか?

紹介制という経営方針は、特殊な車両製作の為、お客さんとの信頼関係が欠かせないという理由が大きく、より良いものを作る上で、実は理にかなっている「やっぱりスワップとか本格的な競技車両となると、どうにかこうにか人経由で来てもらえて。まぁおかげ様でなんとか食えてますね。うちのオヤジが元々やってた会社で、ずっとそのやり方だったんで」

坂本さんは2代目で、もう何十年もこうした営業スタイルを引き継いでおり、オープンではないがひっきりなしにお客さんが訪れるという。もちろんそこには確固たる実力と、人を惹き付けるものがある。

アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔

チューナーはイカれてないと出来ない

取材日、坂本さんの仲間に待ち合わせ場所まで迎えに来てもらった。住宅街を抜け、入り組んだ道をしばらく走ると作業場に着いた。

駐車スペースには100系などのドリフト車が数台置かれており、作業場内には製作中のゼロヨンマシンやエンジンブロックなど所狭しと置かれていた。見慣れない巨大なタイヤは、68のカマロに装着される予定だという。

「この辺のお客さんは狂ってて、もう1200馬力くらいださないと喜んでくれないんですよ。普通にタービンくっつけただけじゃ全然話になんないんですよ。うちのお客さんだいたい、ゼロヨンで8秒台とかで走る人ばっかりなんで、作り手はもっとイカれてないと、とてもついていけないです。じゃなきゃボンネットからマフラー出してくれって言われても作れないでしょ、勘弁してくれって感じですよね(笑)」

と笑いながら話す坂本さんだが、実際1000馬力となるとエンジンから駆動系、足回りに至るまで相当な知識と経験がないと成り立たない領域である事は間違いない。ましてやレースで勝てるマシンとなると尚更である。

アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔

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日本一から世界を狙う

アートエンジンが手がける70スープラは、ゼロヨン界では知らない人はいないのでは?という有名車両で、現在、記録を塗り替えられてしまったが、過去には日本一にもなっており事務所に置かれているトロフィーがその凄さを物語っている。現在は次の目標に向けてセットアップの最中だそうだ。

「もうタイム塗り替えられちゃってますけど、でもまた、コンピューター変えて、タービン組み直して、エンジン組み直してるんで。もう7秒台入れたいねって話してます。海外狙ってます。海外は路面から違うんで。たぶんいいタイム出ると思います」

所有マシン

坂本さんはチューナーでありながらドリフト、フォーミュラー、タイムアタックなど自身でも競技を楽しんでいる。こうした活動は、普段の車両製作にもフィードバックされているそうだ。また、お客さんに聞かれて答えられないのは失礼だという真摯な姿勢があったりする。

この日は所有するドリフト用の90クレスタとフォーミュラーカーを見せてくれた(クレスタについては後日お伝えします)。

「これは、ひとつ古いF4なんですけど(古いレギュレーションに合わせている)セットアップ、メンテして乗ってます。行く所が限られてるんで、そこのギアだけ用意しておいて、後ろ開けるとすぐにギア出てくるんで、20、30分で富士、茂木、筑波のギアって感じ変えられるんで」

車高が低すぎて車庫に入らない為、フロントは通常のラジアルに履き替えられているが、暇を見つけては走りに行っているそうだ。

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ドラッグレース

守備範囲の広いアートエンジンにおいて強みはどういったものなのか「自分が評価されやすいのって、タイムが出る競技かな。ゼロヨンでもフォーミラーでもタイムアタックでも」

いわゆる“速い車”はエンジン、足回り、ボディ剛性など様々な角度でトータルセッティングが必要になるが、ひとつひとつの要素をうまく構築できないと、タイムに繋がらない。アートエンジンは、こうしたトータルコーディネートにも長けている。

「ゼロヨンは一番技術がいる車だと思うんですよ、スタートからゴールまで1000分の1秒、チューナー次第で変わるんで。結局エンジンは、どこどこのパーツつけて何馬力でますよってのは誰でも作れると思うんですけど、足回りって誰でもできる訳じゃないんですよ。独自のアライメントでトラクション稼いだり。まぁ、それはグリップとかドリフトでも同じなんですけど。あと、ランプの付け方と駆け引きとか色々あるんですけどね」

それでは、現在製作中のマシンについて色々と聞いてみよう。

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チャネリング、4LINK、ナローデフ

巨大なタイヤとルーフに載せられたダクト付のボンネット。このカマロはどのような仕上がりになるのであろうか?

「これは、お客さんからナローにしたいってのと、車高をベッタベッタにしたいって言われてます。で、このデッカイタイヤを履きたいって言うんで、まず後ろをぶち抜いて、フレームを作り直して、ナローデフにして、4LINKで繋いでっていうベースを作っています。これが終わったら、ロールバーを組んで後ろの強度だして。今度は前をチャネリングします」

チャネリングとは?
ボディを車体から剥がした後、フレームの位置はそのままにボディを切り込んでフレームにめり込ませる加工。足回りのストローク量を確保したまま、ボディを下げる事ができる。

ナローデフとは?
簡単に言うとトレッドを狭くする事。強力なトラクションからドライブシャフトを守る強度的効果もあるが、巨大なタイヤをボディに入れる為の加工でもある。

4LINKとは?
4LINKとは4本のロッドの事で足を動きを良くします。ドラッグレースの場合、コーナーを攻める訳では無いので4輪独立の足よりホーシングの方が有利です(沈んでもキャンバー、トーなどが変わらない)。上下運動だけなので4LINKはドラッグレースで勝つには有利です。

ちなみに、写真にある巨大タイヤは15インチのホイールに幅が16インチ、高さが33インチと通常に表記とは違い、インチでの表記になっている。

ドラッグレースでの空気圧

ドラッグにおいて、タイヤの重視するポイントが面白い。スタート時は幅があったほうが良いらしいが、高さが重要になるとの事。

「エアー、ベタベタで走るんですよ。そうすると、接地面積増えますよね。で、スタートしてスピード出てくると、遠心力でどんどんタイヤが膨らんでくるんですよ。拳一個分くらい。そうするとファイナルと合わさって最高速も出るって感じですね」

そういえば、タイヤが伸びているような映像をどこかで見たことがある。それにしても、ここまで低い空気圧で走っているとは思ってもみなかった。

アートエンジンのドラッグマシン製作現場にお邪魔

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ドラッグレースはオートマの方が速い?

ミッションはリッチモンドの5速。エンジンは新規に作製するらしい「シボレーのV8のビッグブロッグなんですけど、NOS打って1000馬力くらい。目標はゼロヨンで8秒台出したいんで。アメ車で8秒台出るのって、けっこう凄いほうだと思いますよ。まあ、それお客さんも狙ってるんで。で、今度はオートマ」

どこで聞いたのか忘れてしまったが、ゼロヨンでは、シフトミスがなくタイムラグが発生しない為、オートマの方が適していると聞いた事があるが、真相はどうなのだろうか?

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「ドラッグはなんとも言えないですね、クラッチ踏んで入れてる人は誰もいないんで。皆、エアーとか2速オートマとかシーケンシャルとかなんで、どれがいいとは一概には言えないですね」

メカニックやドライバーによっても考えは変わるようだ。

NOSを押して一発逆転はある?

映画ワイルド・スピードのワンシーンで、高回転で競り合い、負けそうな所をNOS噴射で一発逆転といった演出があったように思うが、NOSやタービンについては実際の所どうなのだろうか?

「トルクがある方が絶対有利ですね。もうトルクの化物。100kg超え。この辺の車ってトルクだけで走るんで。アメ車のピストンって馬鹿デカいんで、7千も8千も回すもんじゃないんです。まぁ、回しますけど(笑)。NOSも一発噴射で200馬力まで出せますけど、まぁ、それは様子見ですね。NOSのタイミングはボタン押してもいけるし、コンピューター制御もできますし、回転でもできるし、アクセル全開の時だけとか。何でもいけますよ」

と、NOSで一発逆転という演出はあながち間違っていないようにも思える。

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匠の職人

普段は面白く、若い人に対しても面倒見の良い坂本さんであるが、マシン製作やレースの事になると真剣な表情で色々と説明してくれた。何よりも関心したのは知らない事があれば自分で実行してみて知るという姿勢。人に支持される、あるいはタイムを出せるマシン製作となると、大胆さと繊細さを兼ね備えた上で実体験がないと達成できない。アートエンジンの坂本さんはそれらを持ち合わせている人物である。

近年、どのような業種でも“匠の職人”は減少傾向にあると思う。「わがままなんですよ。ホンモンのエンジン作ってる人は」と話す坂本さんであるが、昔ながらの手法とインターネットでの情報発信など、現代社会に必要なテクノロジーをうまく活用している。

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「何が嬉しいかって、自分が作ったのでお客さんが一番喜んでくれるのが嬉しいんで。作ってる時よりも良かったよとか、何位とれたよとか、ああだよこうだよって喜んでくれるのが嬉しい。たぶん作り手ってみんなそうだと思いますよ。作ってる最中って、それ以上に真剣にやらないといけないんで。よしやろうって切り替わって瞬間には、もうこうなっちゃってるんで」

Written by: Maruyama
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