90年代、よく見られた光景も今ではすっかり見なくなった。住宅街のどこかしら1区画では若者が集まりクルマいじりやバイクいじりをしていたように思う。時代は代わりライフスタイルが変わったとは言え少しさびしいものだ。
埼玉に活動拠点を置く埼玉技研。彼らのライフスタイルは失われたた90’sクラシックな感じがして取材をしていても、とても心地良いものだった。
双子の兄弟を中心としたチーム
埼玉技研は、AE86乗りの双子の兄弟が中心にバイク仲間や幼馴染が集まってできたチーム。週末は毎週のように集まっている。
簡単な作業は、リーダーの自宅兼作業スペース。フレーム修正や台数が多い際は別メンバーの倉庫に集まって、あれやこれやとクルマいじりを楽しんでいる。何故だか分からないが住宅街にAE86があると、どんな姿であっても見入ってしまうのは筆者だけなのであろうか。
彼らは基本的には、サーキットでのドリフト走行を活動の軸としており、クルマに対する姿勢としては、とにかく「走る」ことに徹底している。どちらかと言うと見た目は二の次と言った感じだ。この日は、サーキットでクラッシュしたマシンも見せてくれた。
埼玉技研で唯一のグリップ仕様マシンにフォーカス
埼玉技研で、唯一グリップ仕様に乗るTakumiさんのマシンをチェックしてみた。
外装はj-bloodの綾織りボンネットとリトラカバー、ホイールはフロントが懐かしい旧ワタナベ(当時物)にリアがSSRのMK-2とまるで90’sのカスタムシーンに敬意を評したようなスタイリングである。
エンジンルームを見せてもらうと、AE111(ピンゾロ)のエンジンに4スロ、AE86専門店カーランドのステンのタコ足。トラストのエレメント移動式のオイルクーラーなどいかにも楽しそうな仕様になっている。
室内を見せてもらって驚いたのは自作メーターパネル。DIYERである筆者も分からないほど、よく出来ている。メーターはDefiのタコ、水温、油温、油圧にULTRA製の限定スピードモニター。パネル自体はアルミ板にカーボンシートを貼って、純正のメーターに被せる形で設置されており、車検も考慮して製作したとの事。見習いたいDIYである。
近年、AE86というとなかなか見かけなくなったが、パーツ購入やカスタム情報はどうしているのかとの質問に「86のパーツはネットとかでは、あまりないですね。でも86乗りは結構ストックしてたりするので、横繋がりが大事だったりするんですよ」
「知り合いの知り合いは、知り合いみたいな。関東内で86乗ってる人はだいたい友達みたいな」との事。
AE86が繋いでくれた人と人
埼玉技研やその周辺は、AE86だけでなくs15や180sxなどのメンバーもいるが、そのメンバーもやはりAE86には一目置いている。AE86だからこそ、あった出会いやエピソードをたくさん話してくれた。友達や先輩の話。
月並みではあるがAE86の魅力について聞いてみた。「形がかっこいいとか、ボコボコでも速くて走れるとか人それぞれ。格上のクルマと走って速かったらカッケーかな。がんばってる音もめっちゃ快感。あと、思ったより速い。雨の日の日光とかハチロク速いんですよね。ターボには置いていかれるけど、NAは進入速いですからね。そういうスリルもあって抜け出せないのかもしれないですね」
合わせてお金があれば綺麗にする?という問いには「うーん、歳をとったら綺麗にしたいかな。うまくなったら綺麗にしたい。40代とかになったら綺麗にしたいかな」
仲間と過ごすかけがえのない時間
埼玉技研は他チームとの交流も多く、本人たちはチームだからといった感覚ではなく、垣根なしに他チームとも集まってよく遊んでいるようだ。
ここまで仲の良いチームも日増しに生活環境は変わっていく。メンバーも仕事だったり、学校だったり様々な理由で。それでも、誰かしら集まって、走行会のない日は作業をしたり、遊びに行ったり。きっと日頃のストレスも、チームで集まれば忘れさせてくれる大事な時間だったりするだろう。
かけがえのない時間は、はかなくもある。だから大切にしてほしい。今ある楽しい時間は、一瞬で過去になり過ぎてしまう。いつか分かれ道が来たとしても、本音で話して、心を許せる仲間との時間は大人になっても忘れないものだ。
願わくば永遠であってほしい。