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フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

Z31を現代の手法で造るとこうなる!千鳥格子パネル、ロマンエンジン、ワイヤータック、シェイブドベイ他。車が持つオーラの源とは!?

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フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

中山氏と話していると20代の頃どんな話をしていたのか考えてしまった。

彼は20代にして大人もうらやむ夢のマシンを手に入れ、さらに先も見ている。

“イマドキの若者”とは言わせない人物だ。

そんな中山氏が制作しているTバールーフのフェアレディZ 300ZX後期 Z31を解剖していきたい。

YT WORKS

取材は東京都青梅市にあるYT WORKSにお邪魔した。

本車両の制作は、主に鈴木さんと柳堀さんが担当。中山氏を中心に鈴木さんも交えて話を聞かせてもらった。

YT WORKSの紹介だが一般車検、整備からカスタムカー制作、ドリ車まで扱うショップ。但しカスタム、チューニングカーに関しては要相談といったスタイルだ。

車造りに関しては内外装、エンジン、セッティングまで自社でやってしまうほどスキルフル。

こうした環境で、Z31はどのような経緯で制作されたのだろうか?

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

中山:「最初、僕がこれを買うってなった時は、どちらかというとレストアして、当時仕様のような感じにしようかなみたいな話をしてたんですけど、ここが競技車両を造ってたりするので、そのノウハウをもって、かっこよくこのネオクラシックっていう年代の車をベースにすると、どんな風になるんだろうっていうところで始まりましたね」

ネオクラといってもZ31はかなり古いため、購入時の状態は見れたものじゃなかったそうだ。

中山:「ほぼノーマル車なんですけど、事故歴もあったりとかして、状態はお世辞にもいいと言えなかったですね」

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

鈴木:「一番最初はオールペンからやったのかな。元の色は赤だったんですよ。綺麗に長く乗りたいっていうのは聞いてたから、もう塗り直しだよねって。で、色々進めていくうちにイベント出したいみたいな話がでて(笑)」

バックボーン

しばらく話をしていると分かったのだが、彼らの関係はお客さんとお店といった割り切った感じではなく、もう少し近い距離で車両を製作しているようだった。

それは、このZ31の仕上がりを見れば納得だ。既製品の寄せ集めではなく造り上げた作品というのが分かる。しかし、このZ31は置きだけでなく走りの要素もきっちりと詰まっていて日本では少なくなってきた方向性の車両だ。

彼らのルーツが気になったので質問してみた。

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

鈴木:「僕は入口はVIPですね。1系、2系のセルシオ乗ってビップスタイルの特集にものって。で、VIPの後に33(スカイライン)です。その頃メカニックとして働いてて。人の車を作りだして、今は基本的に車は何でもやりますね」

中山:「僕も憧れてたのはVIPなんですよ。一番最初は。でも、まだ値段が高かったのもあるし、下げるにもお金かかるじゃないですか?で、ずっと2輪で峠の走り屋をやってたので、一番最初は180sxでドリフト始めましたね。結局それはすぐ、ちょっと調子乗って潰しちゃったんですけど。その後チェイサーとかシルビアとかっていうドリ車にずっとルーツがあって。置きを始めたのがほんとここ数年ですね」

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

「置きの車はチェイサーも置きで造ってあったりとか、USDMのアコードがあったりとか。前からドリ車でも見た目かっこよくないと嫌だったんで、ツラ決めたり、フェンダー造ったり、エアロ巻いたり、ホイールチョイスにもこだわってはいました」

車遊びも上級者になると、カテゴリーに固執する事なく様々なステージを楽しむ風潮がある。彼らも車いじりだけでなく、それを走らせる事を目標としているようだった。

中山:「いずれは筑波。夢は」

鈴木:「目標5秒かな?」

中山:「まぁ、そうね、うんとは言えないけど、、、速いよ(笑)」

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

千鳥格子

Z31の制作は苦労の連続だったそうだが、内装で面白い加工があったので紹介したいと思う。

鈴木:「実際、もう一人いるんですよ(柳堀さん)。内装とかメカニックとか。ちゃんと技術をめちゃくちゃ持ったやつがいて。彼の技術がまぁ、すごいので」

中山:「夢を叶えてくれるというか。ほんと何でも実現してくれて。ドア内の千鳥格子っていう柄なんですけど、これ実はZ31の純正にこの柄の内装があって。それのオマージュというか」

鈴木:「まさか金属でできると思わないもんね(笑)」

ドア内の柄は手作りで制作されていて、柄の1つの型を厚さ5ミリ程度で作って、鉄板に1つ1つプレスして模様にしている。なんとも手間がかかっているが、それだけに見た事がない味わいがある内装になっている。

中山:「ほんと、僕のわがままを形にしてくれた2人って感じです」

少し大人な話をすると、こうしたワンオフ品というのは商売目線で見ると非常に難しい。苦労した割に発注者のやりたい事と違っていたり、時間をかけた割に利益がでないという事があり、最近ではショップもこうしたワンオフ物を敬遠する傾向にある。

お金を積んだから理想が手に入るというのは甘い。発注する側も伝える努力と心の余裕が必要で、ワンオフを受けてくれるショップは大切にしたほうがいいだろう。

フェンダー

フェンダリスト視点でZ31のフェンダーを見ると非常に綺麗なフェンダーだ。

フロントフェンダーを横から見ると、膨らませるのが難しい薄いフェンダーだ。しかし、耳も程よく確保しながらオーバーフェンダー形状になっているのが分かるだろうか?

また、膨らみのトップの部分はほどよくボカしてあり、“クッキリ、いかにも” 膨らました素人感がない。そして前後のアーチの高さも揃っている。

前から見てもプレスラインからすぐ横に広がっていて、仮に車高をもっと下げてもストローク量を確保できるのが分かる。

オーバーフェンダーとブリスターのいい所取りをしたような、本当によくできたフェンダー形状だが、それもそのはず。

中山:「これ、300ZXのフェンダーです」

なんと、メーカー純正のストックフェンダーとの事。

BMW M3のフェンダーなどもストックのカッコいいフェンダーだが、日本車でもここまでカッコいいストックフェンダーがあったのだ。

鈴木:「70スープラでもターボありターボ無しで幅違うじゃないですか?これも一緒で3Lと2Lで幅違うんです。だから爪のみ処理って感じですね。爪折りです」

中山:「あと3L NAとターボでも違ったはず。僕はこのフェンダーじゃないと嫌だったんですよ。リアなんか相当出てて。11jなんですけど。全然、軽々と飲んでくれるぐらい懐が深くて」

中山:「フェンダーは車決めるもんね。シルエット。オールペンされてなくても、なんもいじってなくても、下げてツラ決まって、フェンダー決まってればそれだけでカッコいいじゃないですか。雰囲気出るじゃないですか。絶対そこは抑えないといけないポイントだなとは思いますね」

足元

足元を観察していくと、アメ鍛のrotiform dsc 3ピース [F] 10j+10 [R]11j+8 がよく似合う。タイヤはTOYO TIRES PROXES R1R [F]235/40-17 [R]255/40-17。現在、別のホイールも1年越しで製作中との事だが、リム幅もちょうど良くこの車とのマッチングもいい。

中山:「シルエットがアメ車を意識してて。ちょっとアメリカンな雰囲気を付け足してみてもいいんじゃないかっていうので、今回こういうちょっとメッシュじゃないけど、ディッシュ系のホイールでちょっとキラッとしたものを履かせてみて。これも試作のうちの一つですけど、思った通りになってくれたんで、このスタイルはこのスタイルで僕は気に入っています。タイヤは若干引っ張りです」

キャリパーはAP(フロント6POT、リア4POT)。ローターはワンオフ(2pフルフローティングディスク、ベル部分はチタンカラー)。

中山:「ブレーキはほぼワンオフですね。ただ、入れれるんだったらAPも一番現行の一番強いモデルというので、このプロ5000R。ローターももちろんZ31用なんてものはないので、ワンオフで造ってもらって。あとは鈴木さんにお任せして付けてもらったって感じです」

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

鈴木:「リムからキャリパーが半分だけ見えてるってかっこよくないですか?個人的なあれなんですけど。で、パンパンのローターってかっこいいと思ってて。だからローター径も指定して。キャリパーがホイールの内リムの一番狭いところから、だいたい3mm逃げてれば大丈夫かなって所でローター径とブレーキをサイズ出しして」

これを見ても徹底してやっているのがよく分かる。

車高調は326POWERのオーダー品で、フロントがシルビアS15用、リアはセミトレ(ショックとバネが別々)からコイルオーバー化して取付けている。

中山:「この車、不人気車だったらしいんですよ。パーツがそもそも存在してなかったり、なくなってたりで基本的にワンオフから始まるっていうところでしたね。フロントをS15用にしたのは、アームとかもたくさん出てるし、触りやすいし、こうすればこうなるっていうのがある程度予測で動けるっていうところで、できるだけ便利な足を選んでます。やっぱり雰囲気変えたいってなった時に色々いじるじゃないですか」

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

フロントのS15用は簡単に付くのだろうか?

鈴木:「ボルトオンではないです。テンションロッドの付け根とか。メンバーとか。ロアアームの取付とかも。その辺の長さ調整も必要で。たぶん、ちょっとドリルとか工具使えれば、誰でもできるんでしょうけど」

聞く限り素人には簡単にいかなそうである。

中山:「シル足にすると、ブレンボが使えるっていうので、やってる方はちょいちょい見かけます。33、34、GTR系のブレンボーキャリパーを使いたい。流用が効くシルビアの足にしたいというところで、同じことをやってる人はいますね。自分も前回はGTRブレンボでした」

外装

外装を改めて見ると半目のリトラに、内巻きの純正バンパー、サイドステップ。そして素ガラス(ブロンズ)にTバールーフ。クリーンでいて存在感がある。

リアビューは一文字のテールにロールケージのクロスが見え、その出で立ちは現代車にはない個性があり、一目見れば忘れられない姿をしている。

これがほぼ純正というのは何とも素晴らしい。決して懐古主義ではなく、当時の日本車には夢やロマンが詰まっていた事がよく分かる。

外装で手を入れている所はバンパーのダクト部分、本来は両サイドにフォグがあるのだが、これを取り除きフィンを両サイドまで延長している。

あとは、リアの羽とミラー。

中山:「羽も完全ワンオフですね。ドラッグウイングとダックテールの中間です。ミラーはS15用のクラフトスクエアです。これもちょっと加工して付けてもらってます」

基本的に必要のない物は付けない。あくまでも素材を大切にした上でアクセントとなる箇所も見せてくれる上級者のカスタムと言えるだろう。

イベントなどで実車を見る機会があれば、じっくり観察してほしいものである。

内装

内装の一番フックとなる部分は何と言ってもラディウムの燃料タンク。クリーンな外装からいきなりメカメカしいパーツが目に飛び込んでくるが、これだけでやられてしまう人もいるだろう。

配管のレイアウトも何とも美しい。

中山:「手間を掛けさせて、本当に申し訳ないんですけど。。。パイプから曲げて作ってもらって、配線もその中に通してもらって、っていうのを、1からデザインして、カッコよくセットしてもらったものがこれなんですね。タンクは既製品ですけど、ここのデザインと加工は全部オリジナルって感じです」

鈴木:「トランクは純正フロアぶちぬいてるんで(笑)。もう元あった鉄板がぐずぐずで。新規で全て鉄板貼り直して」

コレクタータンクの土台となるフレーム部分も鉄板を貼ってスムージング加工がされてあり、両サイドはバーリング加工。鈴木氏は気がついてもらえないとなげいていたが、写真だとスムージング後が分かりやすいかもしれない。

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

中山:「正直、この辺はTバールーフの宿命ですけど、水回っちゃって。ぐずぐずで、指で押すと地面が見えちゃうって状況で全部造り直してもらってます」

さらに観察してみると、タイヤハウス部分の凹凸や燃料タンクの横に見慣れない凹凸がある。これもデザインされたようにも見えるのだが、これは純正にあったものだろうか?

鈴木:「これはビードローラーですね。何ていうのかな、オスとメスのローラーがあって、そこに鉄板を挟んでぐるぐる回すと、凹凸ができるんです。ビードローラーでデザインしてるんですよ」

中山:「Zって歴代でエンブレムがあって、31のエンブレムっていうのを分かってくれる人は分かってくれますね」

こういったこだわりを見ると嬉しくなってしまい見入ってしまう。

コックピット

鈴木:「ロールケージもほぼ自作ですね。メインフレームだけスパンレーシングってところで立ててもらって、で、あとは追加の補強バーとクロスだったり、このバーリングの鉄板とかは、うちで継ぎ足してって感じですね。フロントはAピラー落としです」

中山:「ガセットとかも全部溶接でしっかり止めてもらって。あくまで機能美って感じです」

バケットは中山氏がこだわり続けているブリッドのLOW MAX。

中山:「これ、今まで乗ってきてる車、ドリ車も置きもブリッドのグラデなんですよ。この柄が好きで、この色が好きでっていうのがあったのと、シルバー、黒、白っていう内装で統一した所にグラデロゴのブリッド2脚入れて。ハーネスは統一感ってところで、シルバーをチョイスしてます」

運転席のまわりを見るとipadが綺麗に埋め込まれているのが分かるだろうか?

中山:「イベントとかだと制作途中の写真とかを、流してたりするんですけど。結局、社外コンピューターが入るので、それのモニター代わりにも出来るしいい感じです。もう、この仕様なので、エアコンレスで、エアコンのパネルとかオーディオパネルとか元々あったものは撤去して、木枠で。ipadが入る土台を造ってもらったという感じですね」

センターコンソールもシートヒーターなどのボタンが付いていたが、これも取り除きスムージングしている。運転席のペダルはレーシーなチルトン製のオルガンペダル(900シリーズ)を導入。車内にマスターシリンダーを移設している。

鈴木:「足元はスケボーのデッキです」

中山:「僕が好きなブランドです。まぁ、あれも遊び心で…」

鈴木:「こんだけやってたら、やっぱり外しは作っとかないとね」

ロマンエンジン

この車で最も力を入れているというエンジンルームを紹介してもらう。

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中山:「今載っているエンジンはL28の改、3.3Lです。で、インジェクションの電子スロットル仕様になっています。なので、キャブじゃないです。結構Lだとキャブの人多いですけど、今回は電子スロットルという仕様になっています」

「エンジンは1個1個内部のパーツから全部選んでいって、それを組み合わせてエンジンを造ったという感じですね」

元々載っていたZ31のVG30ETからL28エンジン改3.3Lエンジンを搭載。エンジンマウントはワンオフ製作している。

エンジンブロックはN42マニアブロックを採用。ヘッド、カムホルダー、バルブはPAMS×JMCのL6 HEAD PROJECTにて製作された物を使用。クランクシャフトはOS技研フルカウンタークランクシャフト、カムシャフトは東名パワード8.3mmプロカム。

スポーツインジェクション化、電動スロットル化に合わせて6連バレル式スロットルを使用。制御はLINK、ハーネスはすべて引き直し。

とその言葉通り既製品ではなく1から組み立てたエンジンになっている。

この内容でどれくらい馬力を狙っていくのだろうか?

鈴木:「今は動いてないのであれですけど、大体300後半、400弱くらいになると思います」

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中山:「目指せ380の気持ちでいます、僕は。あんまりカリカリにやりすぎて飛んじゃっても嫌なので、ある程度余剰を持たせて380くらいを目指せたらなという感じです。SOHCでこの年式のエンジンでそれくらい出れば十分だと思ってて。NAなんで、どちらかといったらロマンエンジンですよね」

NAシングルカム、圧縮比14前後で380馬力を目指す。馬力主義ではなく、名機といわれるL型エンジンを余力を残して楽しむというのは大いにありな選択だと思う。

さらにミッションは日産の71cミッションをストレートギア化して搭載、プロペラシャフトはワンオフ加工品、JUN AUTOの軽量クロモリフライホイール、クラッチはNISMOスーパーカッパーミックスツイン。と、思いっきりアクセル踏みまくりたい内容だ。

ワイヤータック、シェイブドベイ

すでにお気づきかと思うが、エンジンルームを見るとあるはずの物が色々ないワイヤータックにシェイブドベイ。元々広いエンジンルームとしても隙間だらけに見える。

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

鈴木:「これからセンサーをつけたりするので、取り回しこれからなんですけど。基本は見た目はほぼこのままです。配線は全部下通しちゃうので。ラジエターも見えないところを持っていっちゃうから」

中山:「ラジエターはヘッドライトの下ですね。ヘッドライトの下に斜めマウントで左右掛けで入れるつもりなんで」

鈴木:「普通、絶対ラジエターあるじゃないですか。それが嫌だったんで。ボンネット閉まっていてもダクトからクランクプーリー見えたら面白くない?というところから、じゃあ左右独立でよくね?って感じで」

驚いた事に、今は動いていないがこの見た目で走れる状態にするとの事。現在、電スロのモーター(輸入品)を注文しているが半年たった今も届かないとの事で作業はストップしている。

エアコンレス、マスターシリンダー室内移設、ワイヤータックにラジエターをヘッドライト下移設。さらに今後ボンネットのキャッチも取り除くという徹底ぶり。

その他、エンジンルーム内は至る所にあったサービスホールを埋めてスムージング加工。黒のキャンディー塗装にヘアラインも入れているという。

鈴木:「写真に写るかな?すっごい分かりにくいかもしれないんですけど、シーラーが入る所はソリッドの黒で塗装されてて、それ以外はキャンディーで塗装しててグラデーションになってる上にヘアラインが見えるんです」

エンジンルームを見た時にどことなく光沢感があるのは、こういった工夫の賜物かもしれない。最終形態になった時、このまま黒一択になるのか差し色が入るかどうかは今後の楽しみとしたい。

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最後に給排気だがエキマニはS&A AutoCreateベルヌーイ。そこから出口まではワンオフ加工(出口はバイクのマフラーがベース)との事。

車が持つオーラ

これまでZ31を解剖してきて分かった事は、20代にしてここまでの車を造った中山氏とYT WORKSのセンスや技術。

とにかく改造する、人目を引くために理由なき改造をするといった禁じ手は一切見られない。

一つ一つに意味があり、トータルバランスに優れていて、そこには機能美や夢も詰まっている車両だ。

カーショーでは優れたカスタム車両、何らかの輝きを持つ車両を「オーラをまとっている」と称賛するのだが、これは車格や手数、金額では生み出せない。

定義が難しいゆえに、カスタムの面白い所でもあるが、この車は確実にオーラをまとっている。

鈴木:「その車が持っているオーラですよね。絶対ありますよね。不思議なんですけど」

中山:「イベント行っててもサーキット行ってても、この車は!っていうのは、やっぱりありますよね。全然僕は素人ですけど、素人目で見ても、やっぱり分かるし、そうなれているのであれば、本当に光栄な限りですね」

鈴木:「大変だよ、車にオーラ持たせんの(笑)。たぶん、造る人の熱意次第だと思う。金額じゃない」

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確かにオーラをまとっている車両は造り手の熱意がいかに詰まっているかによるのかもしれない。それがオーラの源なのだろう。

鈴木:「あとこれ、ある意味、全世代対応型だと思います。当時の物でさらに古いエンジン積んで。でも現代の技術で動かしてるっていうので、どの世代にも一応受けるんじゃないかなと(笑)。エンジンルーム見てもらえれば、おじさん達はそれこそ、うわぁLだってなるし。でも制御はコンピューターでインジェクターついてると若い人達に刺さるしね」

達成感

ここまでの車両となると相当大変だったと思うが、やり甲斐というか達成感を感じた瞬間はあったのだろうか?

中山:「ありましたね。1回目は、オールペン終わったタイミングでしたね。やっぱり、すげー、この車、このベースが、やっぱり、超かっこいいなっていうのがあって。だから、塗装の時はずっと覗いてましたね(笑)。出来上がるのが、やっぱり楽しみで」

「次は内装できた時かな。Tバールーフに対応したロールケージが理想通り組まれて。ラディウムの燃タンがついて。内装をここまで造り込んだのは初めてだったんで、ほんと理想に近づいてきてるなっていうのがありましたね」

当面の目標はエンジンを完成させる事らしいのだが、次に造りたい車もあるそうでこれからの活動が楽しみな人物だ。

中山:「そうですね。まだまだやりたいことはあります。この車は20代の集大成として自分がやりたかったこと、夢だったこと、自分の大好きな車を突き詰めた作品として造ったつもりです」

昨今、20代の若者、Z世代は趣味がない、働かない、夢がないなんて言われているが同調する必要は一切ない。彼のように行動し夢のマシンを手に入れている者もいる。

最後に20代にしてどうすれば、理想のマシンを造れるのか聞いてみた。

中山:「そうですね、まずは協力してくれるショップを探すって事。あと、ローンで造るっていうのは別に僕はいいと思うんですよ。その後々の支払いの部分だとか、そういうところをちゃんと計画的にできるんであれば。結局車乗って借金地獄で車嫌いになっちゃってっていうのが多分最悪なパターンだと思う。それはすごい車好きとしても寂しいことなんで」

「僕は仕事の方も夢があるんですけど、趣味というか夢に対しても何かこう、ずっと動き続けることが一番大事なんじゃないかなと思ってて。それが絶対っていうわけではないですけど。常に新しいことにチャレンジをし続ける。この車もある意味一つのチャレンジですし、これからもっとチャレンジしたい部分、ステージありますし」

フェアレディZ 300ZX 後期 Z31 ワイヤータック シェイブドベイ ラディウム APレーシング

「そういうところに向かって最短で行きたいなら、たぶん最短で行くルートって死ぬほど努力することなんですよ。仕事でも自分が持っているスキルをさらに伸ばすのか、新しいスキルを身につけるのか、どちらでもいいんですけど、そこを誰よりも磨き上げる。誰にも負けないって言えるぐらいにならないと」

「本当、根性論じゃないですけど、死ぬほど努力することがたぶん最短ルートなんですよ。結局」

Written by: Maruyama
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