数ヶ月前に「きしみ音が全く無くなった、ほんと効くよ」と聞いて、ウルトラレーシングの噂は知っていた。
タワーバーやロールケージなど、補強パーツはそれなりに経験してきたつもりで、その効果も何となく頭にインプットされている。「そうなんだ」というのがその時の正直な感想だった。
しかし、ウルトラレーシングを入れてみて、“おかわり”したくなったという話をしたいと思う。
ウルトラレーシング
デモカーの180sxは今の所サーキットを走っている訳でもないし、激しい乗り方をする事もない。
ただ、ウルトラレーシングについて詳細を聞く機会があって、その内容と価格に興味が湧いたので、購入させてもらう事にした。
選んだパーツはフロントメンバーブレースとサイドロアバー。特にサイドロアバーはどんな効果があるのか不安と期待。
取り付けは埼玉のrdbaseで、ウルトラレーシング・ジャパンの篠さんに来ていただき説明してもらう事になった。
特徴
ウルトラレーシング・ジャパンが日本でスタートした際は輸入車ユーザーに向けて販売していたそうだが、最近は国産でも付けている人が増えてきている。トレンドに敏感な人ならすでに知っている人もいるだろう。
「国産系だとスポーツカーは、シルビアとかスカイラインとか日産系が多いですね。あとはミニバンもたくさんありますし、アルファード、ベルファイヤ、オデッセイとかも注文いただいてます。ミニバン、セダン、スポーツカー、輸入車、国産車問わずですね。ラインナップは4500くらいラインナップがあります」
豊富なラインナップという事で、だいたいの車種は揃っていそうだ。
実際に商品を見せてもらったが、サイドロアバーは初めて見た。ただ、所見の感想としては怒られそうだが、これといって特徴的な所はないように見える。
そこで、ウルトラレーシングの特徴を篠さんに聞いてみる。
「そうですね。一番はボルトで繋がないっていう所なんですけど、複雑な構造している物はボルトで繋がずに溶接しているっていうのがコンセプトで、分かりやすいのはタワーバーですね。今、86用とシルビアの14、15用があるので見せましょうか?ちょっと先日付けた物なんですけど」
と、乗ってきた社用車に積んであったサンプル品を出してくれた。
ボルトがない
「この二本の束になっているのが86、FT86、ZN86あとBRZ用です。前期後期対応です。一本のがシルビア14、15用です。で、ボルトで繋がないって話でタワーバーが分かりやすいと思うんですけど、一般的にボルトで留めてる事がほとんどだと思うんです」
「このブラケットとシャフトの部分ですね(指差してる所)。ここを溶接する事によって強度を上げるというのが、うちのコンセプトの一つで、カタログとかにも書いてあると思うんですけど、強度試験もボルトありと溶接留めで比べてみると、やっぱりこの造りの方が横にかかる力、縦にかかる力、斜めにかかる力に対してもこっち方が強度が高いという事が証明されてます」
「やっぱり、ここの強度が高くないとサスペンションを抑え込む力、ポテンシャルというか本来の性能を発揮できないんです。ここがボルトになってしまうとどうしても逃げが生じてしまうんですね」
走っている方ならクルマはよじれるというのは当たり前と思っているかもしれないが、補強をしても連結部分がボルトだと、そこで逃げてしまうというのは、少し踏み込んだ知識が必要だろう。
衝突時には
ショウカーやドラッグで見られるパイプフレームなどは、一箇所当てると他の部分も押してしまう。
そう考えると、そうした特殊な目的で造られたクルマ以外のパーツは色々なシーンを想定する事が必要になる。
「ここに窪みがあるんですけど、ぶつかった時に反対側を押さないように、ここで折れるようになっています」
車種によって専門設計している為、これについては物によって異なるそうだが、ウルトラレーシングは実際にサーキットを走ったり、街中を走ったりする事を想定しているユーザー目線の商品であるのは確かだ。
「ウルトラレーシングはシャフトの厚みを1.2mmから1.6mmの鉄板にしてるんですね。各メーカーさんで考え方が色々あると思うんですけど、うちは強める所は強める、折れる所は折れるというようにって感じで剛性と安全性を重視しているというコンセプトになっていますね。あとは、アルミよりもスチールの方が強度があるのでスチールを採用しています」
スチールの強度はだいたいだがアルミの2倍程度。スチールの方が重量はあるが、シャフトの部分などは少し薄くして軽量化している。
また、ブラケット部分は車種によって異なるが4mmほどあり、ここでも強度を上げているとの事だ。
歪み
取り付けにあたり、少し意地悪な質問をしてみた。というのも180sxは激しい走りこそしていないものの、旧車と呼ばれる域に片足を突っ込んでいるような車両。
タワーバーなど取り付けた方は分かると思うが、取り外しが難しいケースも多く、そうした際にはボルトが非常に役立つ。これを考えれば、そもそも一体物のバーが付くのだろうか?
「付け方によると思うんですけど、純正に合わせた設計なので逆に歪んでいるのであれば、歪みを治すというか矯正という意味でもこれに合わせてもらった方が良いかと思います。今の所付かないというのはないですね」
サイドロアバー
まずはサイドロアバーだが、メインフレームに沿って取り付けるイメージだ。
フロント側は、フレームの穴に付属のボルトを入れて留めるだけ(ボルトの回転方向に注意)。
リア側は、メンバー付近を3点留め。運転席側の取り付け時間は10分程度だっただろうか。
助手席側は、ある程度予測してたとは言え、やはり歪みがあり取り付けに少し時間がかかった。
180sxでは有名な話だが、メインフレームが途中で切れている。ここのせいか断言できないが、長年の疲労が蓄積していたのだろう。
それを考えれば、このタイミングで補強を入れたのは良かったかもしれない。このまま放置しておくと、きしみ音やドアの締りが悪化していたと思う。
フロントメンバーブレース
メンバーブレースは左右が連結されており、いかにも効果がありそうだ。
こちらは歪みもそうだが、スペース的な問題もあり取り付けに少し時間がかかった。取り付ける車両の状態によると思うが、180sxも素直にボルトオンという訳にはいかなかったが、それでもサイドロアバーと合わせて作業時間は1時間かからなかった。
気になった事
おそらく、サーキットでドリフトしている熟練者なら感づいたかもしれないが、フロントのメンバーブレースに対してサイドロアバーは左右で連結していない。
これもまた意地悪な質問であるが、果たして左右を繋がずこの状態で効果はあるのだろうか?
「メーカー的には全部付けてほしい所ではあるんですけど。そういう訳にもいかなくて、お客様によっては色々なコンセプトがあるので。で、サイドロアバーの効果としては、車体って一枚の薄い鉄板として考えると、歪みもするし色んな方向へひしゃげる」
「そこを抑えるという理由で効果的があって、あとブレーキングした際にフロントに荷重がかかるので、その際にも抑える効果があるのでリアのブレーキも有効活用できます。フロントばっかりに荷重をいかせないようにするんですね。サーキット走行ではかなり効果が出ると思いますよ。サイドロアバーはおすすめですね」
事前の噂、篠さんの解説。これを聞く限りかなり効果がある商品という事は分かる。
しかし、実際はどうだろう?ハードな走りをしないと分からないかもしれないし、プラシーボ効果という事もありえる(篠さんごめんなさい)。とにかく、少しテスト走行をしてみる事になった。
効果レビュー
乗り出した瞬間に口元が緩んでしまった。
まるで剛性が良いとされる輸入車のような安定感。表現するのが難しいがこれまでは“畳の上”に乗っていたような感覚が、今はしっかりとした“鉄板の上”に乗っているようだ。
コーナーにおいても逃げていたタイヤが、今はしっかりと両手で地面を掴んでくれている。路面状況に対して、どこからともなく鳴っていたきしみ音も無くなっている。
思わずニヤけてしまったのは、その効果も勿論だが今までこれほど、フワフワしていたのかという気付きと、補強に関する認識力の甘さからだ。
考えてみれば大半の人が、補強に関しては見える部分の補強に注目しているのではないだろうか?この経験を通じて感じたのは、むしろ最初は下廻りの補強を大切にすべきと思った。
サーキットで攻める事を想像すると別物の動きをするかもしれない。トラクションアップというメーカーの触れ込みは大げさではなく事実だ。
パワーアップには必需品
篠さんに感想を伝えると嬉しそうだった。
「BMWのM4とかもブーストアップすると、リア周りのボディが付いていかなくてタイヤがバタついてしまうので取り付ける方いらっしゃいますよ」
剛性が良いとされる車体であっても、パワーバランスが変わるとボディが追いつかない場合がある。そうした際には、補強をしてはじめて路面にその力を伝えられる。これを考えると高年式の車両や、剛性の弱い国産車は必須と考えてもいいのではないだろうか。
180sxに関してはサイドロアバーはおすすめだ。ただシャコタン乗りや、色使いにこだわる人の目線で気になる点を伝えるとすれば色が白しかないのと、サイドロアバーに関しては腹下が少し下がる。
これは海外製ゆえに仕方がないが、気になるようであれば色を塗るなり、出っ張っている部分を削ったりすれば良いかと思う。
追加で購入した
在庫がない場合は本国から取り寄せになるそうだ。本国にはラインナップのほとんどを在庫しているらしく世界中から注文が来ているとの事。
しかし、主要車種の大半は国内でも在庫している為、時間もかからずに手に入れる事ができる。
それにしても、補強の奥深さに少し触れるいい機会になった。補強に対する認識力も欠いていたが勉強になる取材であった。
180sxはガチガチの補強するつもりはないし、現状では必要はないと思っているが、取材を終えてしばらくしてから気が付けばルームバーを注文していた。