オーバーフェンダーに太いタイヤ。このオールドスクールとも言えるスタイリングは、90年代には息を潜めていたが、ここ数年で海外での人気もあり、再び見直されているように思う。
汎用フェンダーといえば、実に多くのエアロメーカーから発売されているが、兵庫にあるMOZEにお邪魔して、D1選手も装着しているという人気のミサイルマンを手にしてみた。
ミサイルマンの秘密
結論から先に伝えたい。何故なら「これは面白い」と感心したから。このミサイルマンだが、何と“しなる”のである。
故に、どんなクルマにも装着できてしまうという“汎用”という言葉通りの商品なのである。
多くの場合、汎用と言えどフィッテングを考えると、実際は加工が必要なケースも多いと思うが、試しに敷地内に置かれていた、180SXと普通の乗用車で試してみたが、少し押さえるだけで、そのまま装着できてしまった。
また、このミサイルマンだが、お客さんの声を代表である水戸さんが拾って造った、言わば現場で生まれた商品で、こんな工夫がされているそうだ。
「フェンダーが寝てると、キャンバー付けてタイヤ引っ張らないときつくて、走らすクルマはキャンバー立てて、太めのタイヤ履きたいから、そういうフェンダーがほしいって声があった」
「ミサイルマンは、走ってもタイヤが当たらない。前から見たらフェンダーがあって折れてるんですね(耳の部分)。それが太いタイヤを履ける秘訣。斜めになってると、バンプした時とかに、斜めになっている部分に当たったちゃうじゃないですか?そういう逃げを造ってあります」
材質はFRPだが詳細は秘密。エアロにも同じ材質が使われており「おかげで割れにくいバンパーとか言われます」との事。もちろん純国産品だ(ミサイルマンのラインナップ、ミサイルマン装着車)
現場ありきの商品
「ミサイルマンも、そろそろ70mmオーバー(フロント)も造らないといけないと思ってます。ショートナックルで太いタイヤを履くと内側が当たるんで、外に出したくなる車両が増えてきたから。干渉するとクルマの挙動が不安定になるから、それを補う部品として造ってもいいかなと思っている」
MOZEの商品は、こうした現場での声を拾って形にしている。結果、それが品質を保つ事になりショップの露出は少ないものの、口コミで広まっているようだ。
MOZEについて
さて、MOZEについて語るには、多くの時間が必要になるかもしれない。とにかく“濃い”。
取材日も事務所にお客さんが集まり、オーディエンスを巻き込んでの思わぬ取材となった。
MOZEは、カスタム・チューニングから板金整備まですべて自社で行っている。水戸さんはスキルフルで「ハードチューンのコテコテマシン大好きです」という人物。
昨今、クルマ屋さんというと、そうした車両を敬遠しがちだが何でも出来ますと話す。
「できますよ、ピストンばらして、ナニして、アレして、測定して組んでとか、そういうのもできますしね。800馬力のエンジン造れって言われたらできますし」
また、フレームを押してしまったような事故車まで治してしまうという「今、修正機に乗ってると思うんですけど、S2000はフレーム交換中ですね。ごっついフレームいわしたクルマも治しちゃう。これホンマに治るの?って思うような、普通なら廃車ってクルマも治してきましたし」
「ただまぁ、相談しますね。お客さんの予算もありますから。箱替えの方が安いケースもありますし。まぁ、愛着とかそのへん天秤にかけたら、どっちって話もありますし。でも、依頼は受けたらやります」
人物像
これまでの話を聞いていると、どういう経歴の持ち主なのか興味が沸いた。
「釣り人と言ったら怒られる?(笑)大昔から、みんなと同じですよ、走り屋さんから流れてきて、車屋さん始めて。ストリート・リーガルとか出てましたし、フォーミュラーDも参戦さしてもらったり、D1もなんちゃってで参戦さしてもらったりとか。その間にタイでレースっていうのもあったね。ビッツレースもあった。そういう流れで、今は休憩中です」
とにかく走りまくってきたと話す。こうした経歴があり、蓄積した知見に惹かれ、お客さんに囲まれているショップという印象持った。
「ひどい時は、ここから備北に週3とかありましたね。岡山まで週3やで(笑)ひどい時そんなんでしたね」
室内には、過去に獲ったトロフィーがずらりと並ぶ。
理解
ショップにはどのような車両が訪れるのだろうか?
「色々ですよ。普通のクルマも来てくれるし、ドリ車も多いですね。やっぱりドリフトしてたんで。ドリ車も少し突っ込んで話すと、ドリフトの世界は本気組と、スタイル組、まぁドリドレですよね。この二択に分かれる感じで、僕は本気組だったんですね。でも、ドリドレ組めっちゃ好きなんですよ。何て言ったらいいんでしょ、クルマ造りは違えども、みんなそれぞれ目標と考えがあってクルマを造ってるんですよね。それの手助けを今ずっとしてる感じです」
会長職やな!!とオーディエンスから声が上がる。
「僕も出世して、関西オールスターあるじゃないですか?来年、兵庫県の取りまとめになって、あっ、出世したわって(笑)」
“本気組”と、“スタイル組”の両方に理解を示す水戸さんは、それぞれに対してこんなコメントをしていた。
「クルマ造り的には、ドリドレは基本大きいホイールで、ケツが滑って、煙が出て、フェンダーのツラとかを意識して、ようはカッコいい、本来走るスタイルじゃないクルマが走ってるやんって言うのが楽しいですよね」
「本気組は本気組で、アライメントを1度変えたらどう変わるとか、車高を数ミリ変えただけで良くなるよとか本気組の人には、そういう話をしますよね」
この会話から、今も現役でシーンを見ながら、エアロを造って、ハードチューンまでしてしまう、とんでもなく守備範囲が広い人物だと感じた。
MOZEブランド
MOZEのエアロは、S14シルビア、S15シルビアのエアロKIT。汎用フェンダーのミサイルマン、S14フェンダーのS15顔面スワップスワップKITの他、下記のような商品もある。
大島選手とコラボしたFRPのサイクルフェンダーキット
鉄板で造るとなると大変だが、サイクルフェンダーを手軽に組めてしまうFRPのサイクルフェンダーキット。ストリートシックで取材した車両にも装着されていたが、D1選手にも愛用されているそうだ。
こちらは何と、定価55,000円のところ「ストリートシック見た!」と伝えていただくと、23,000円引きの32,000円で買えてしまう!!詳しくはページ下部にて。
シビックのシャコタン用フロントナックル
その名も猫パンチ。シビック用だが他にも依頼があれば製作するとの事。
「ダブルウィッシュボーンなので、車高下げると干渉するので、それを改善しつつ車高調から逃げる。乗り心地はだいぶ良くなりますよ。アルミ以外でダブルウィッシュボーンなら何でも造れますよ」
死を意識して
しばらくの間、水戸さんとお客さんで雑談をした。その時間はまるで吉本新喜劇のようで、何とも居心地のいい空間であった。会話がとまらない。
そして、事務所の傍らには「ローズ」という名の怪しげなマネキンがこちらを見つめていた。
水戸さんという人物は、アクティブでファンキー。しかし、時折プロな表情を見せる。
ーーエアロはいつ頃はじめたんですか?
難しい話ですけどね。時代の流れと共にあるんですけどね。一番大きいのは、半身不随ってなった事あります?
ーーないです、それはなかなかないと思います。
話が訳わからん方いきますけど(笑)25才で僕、半身不随になってるんですよ。
これまたサーキットでドリフトなんですけど、昔のサーキットって、場所によってはヘルメットなくてよかったんです。それで、助手席やったんですけど、運転手が横転して。
退院する時に医者から80%死んでたって言われたんですね、で、20%は後遺症残るって言われたんですよ。
それで奇跡の回復をしまして、左足動かんかったのに、クラッチ踏めるやんみたいな。その時から何でしょうね、普通に生きたくなくなった?1日1日何かをしてないと嫌みたいな。
ーーそれまた、すごい経験ですね。
だから、リーガルとかも全力で走りますし、D1とかもライセンス持ってただけでクルマ借りて出たんですよ。そういうのとか、みんなチャレンジしたらええのになっていうのが…半身不随からつながってると思うんですよね。
ーーなるほど、なるほど。
エアロの流れも一緒で、いきなり最初にS14用を造ってみたんですよ。サーキットで突っ込まれたんで。
とりあえず造ってみて、その次の年だったか、S15を東京オートサロンに無理やり持って行ったんですよ。大阪でもそういう所に出したことないんですよ?
とりあえず当たってみて砕けちゃえみたいな感じで。今でもそのクルマの部品は売れてますけど、だから何かな、チャレンジですよね。
明日死んで後悔しない人生を送りたいみたいな。やらんより、やって失敗する事の何が怖いんみたいな、そんな感じですよね。やって失敗したら、笑ってたら良いんじゃない?
そういうのが、クルマ造りのチャレンジ精神につながってるんちゃうかなって思うんです。
何かをもらった時間
人生には何かを悟る瞬間が何度かある。水戸さんは命に関わる大怪我を経験し、それ以来、日々チャレンジを続けている。
そんな男が造り出した商品や居場所、話す内容に魅了せられていた。きっとお店に訪れる人も、これから来る人もそうであろう。
これを読んで、自分に問いかけてみてほしい。そして、何かを感じてくれればと思う。
話は尽きなかったが、外から激しい雨音が聞こえ、営業時間が過ぎていることに気付き、お礼を言ってショップを後にした。
ZERO-1 MOZE(モゼレーシング事業部)
〒651-2267 兵庫県神戸市西区平野町西戸田520-1
営業時間:10:00〜19:00(日曜・祭日は10:00〜18:00)
定休日:不定休(レース、イベント日はお休み)のため、ご来店の際はお電話下さい。TEL:078-961-7801
FAX:078-961-7802Twitter : https://twitter.com/MOZE_RACHING事業内容 : DRIFT・レース活動・VIP・USDM・JDM、パーツ開発/販売(各種ローン取扱い中)
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ご来店の際に「ストリートシック見た」とお伝えしていただければ
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