それぞれのマシン
予選が始まると、さきほどのギアボックスのトラブルなどなかったかのように、Martin Richardsが好調ぶりを見せる。
Christian ChristensenのV8ターボを積んだNC MX5 は格好良かったが、惜しくもトップ32入りを逃してしまった。
Driftworks主宰のPhil Morrisonの「練習車」で競っていたDriftworksのドライバー、Richard Grindrodは大健闘。
Vertex Ridgeのエアロを装着しているクルマは、UKのドリフト大会ではなかなか見られない。
GT86を活用している人はまだ少ないと感じるが、燃費が良くなり値段が落ちている今、今後このクルマで走るドライバーも増えるのではないかと見ている。
ストックNAエンジンが搭載されていることがネックではあるが、Team JapspeedのPaul Smithは同じくトヨタの2JZにスワップすることでパワー不足を解消しており、予選で奮闘しトップ32入りを勝ち取った。
去年のBritish Drift Championshipのチャンプに輝いたMatt Carterは、残念ながら今年は前年の好調を再現することができなかったようだ。
LS2で走るJason ClarkのFD RX7は、やはりロータリーエンジンが心臓部にあったほうが嬉しかったが、ルックスは文句なしの1台だった。
特筆すべき存在が、E36で競うAlistair Suttonだ。200BHPほどしかないクルマのため不利であったが、アグレッシヴかつ気合に満ち溢れた走行で2倍、3倍、あるいは4倍もパワーを持つ車両と同等にやり合い、余裕でトップ32に残ることができた。
もうひとり奮闘したのは、Conor Shanahan。圧倒的なスピードを披露した彼なら、これまでぶっちぎりであったDuane McKeeverの勢いを決勝戦で食い止めることができるのかも?
V8搭載C32ローレル
さらに興味深いのがこちら。驚いたことに、Peter HaydenはC32 LaurelのRB20を取って、なんと代わりに BMW V8を入れているとのこと。なかなか見ないエンジン・チョイスだが、大会で競うことを考えるとうなずける決断でもある。
コンペ用のクルマだが、その信念はどこまでもストリートだ。ペイントはシングルカラーで、フロントとリアのナンバープレート、そしてダッシュボードやセンターコンソールまでもが純正のままなのだ。
リトアニア出身のAurimas Vaškelisは、V8ターボ動力のBMW E30でパワフルかつ粘り強い走行をし、ここにも優勝候補がいることを見せつけた。
しかしやはり予選の首位を獲得したのは、優勝候補の大本命Duane McKeeverであり、これで彼が王者の称号に一歩近づいたことになる。
本戦前
さて、本戦が始まる前、トップ32の選手とファンたちとの交流の時間があった。ファンたちは間近でマシンを眺め、ドライバーたちと話し、なかには一緒に写真を撮っているファンもいた。
観衆が席にもどった後、British Drift ChampionshipのCEOとしては今大会が最後になるDavid Eganが登場してスピーチをした。
本戦スタート
そして選手たちの紹介が行われた後、ついにバトルの火蓋が切られた。
Rockingham Motor Speedwayの上空が薄暗くなってきたころ、Duane McKeeverの1位への独走を阻止するべく猛進する男がいた。
V8を積んだBMW E30を操るAurimas Vaškelisである。
彼は今回の予選ラウンドでは大活躍していたが、今シーズンは様々なメカニカルトラブルが続き、本調子を発揮できずにいた。勝利の女神は果たして決勝戦で彼に微笑むのか?
追走の第一走行の後半、VaškelisはDuaneのドア付近まで大胆に接近し、優位性を主張。
その迫力に圧倒されたか、Duaneはその後もVaškelisのアグレッシヴさについていけず、勝敗が決定してしまった。
これまで4ラウンド連続で圧勝してきたDuane McKeeverが、最終ラウンドでついにVaškelisに敗れたのだ。
勝敗
最終的に総合得点で大会を制したのはやはりDuaneであったが、この奮戦が功を奏し、Vaškelisは3位の座を掴むことができた。
最終決戦後、クルマから降りたVaškelisのもとにチームネイトや友人たちが駆け寄り、彼を胴上げして祝福していた。
こうして、今年のUKのドリフト競技シーズンは大盛り上がりのもと、終りを迎えた。
British Drift Championshipのチャンピオンがアイルランド人だということ、そして来年には当大会に新オーナーが就任することも考えると、来年は新時代の幕開けになるだろう。
サーキットの閉鎖など悲しいニュースも目立つが、UKのドリフト・シーンの灯火は、トーナメント大会であれ、アンダーグラウンドであれ、今後も眩しく燃え盛ることは間違いなさそうだ。