Oさんの追求している“おっさん仕様”。笑いを取りに来ていると思いきや、本人は至って真剣で、話を聞くとそれを表現する為に隠れた努力もあったりするから面白い。
もしかして、この記事を読んで、Oさんに続くおっさんJDMなマシンが現れるかも知れない。スタイルはどうあれ、新しいカスタムを提案している。
早朝
待ち合わせは昭和感のある「オートレストランゲーム」なるお店。この場所をセレクトするあたり、この男は只者ではないようだ。
ノスタルジックな雰囲気を堪能しながら、寝癖もそこそこに、Oさんが110について話してくれた。
「マークⅡってツアラーVとかグランデってあるじゃないですか?110系だけ、おっさんがよく乗ってるような?グランデがあって、内装とかアイボリー系なんだけど、ツアラーVの1JZが載ってるグレードがあって、それがこれなんです」
「それまでは、90のマークⅡ乗ってて廃車にしちゃって、で、まぁ、元々ツートンカラーのクルマ乗りたくて。これは、マニュアル載せ替えで公認とってたんで買いました。で、よくよく調べてたら、そういうグレードだったんです」
おっさんJDMの始まり
グランデG-tbは、1JZが載っていながら走行も少なく、車両価格も比較的安い。MTとなると価格は変わってくるが程度を考えるとベース車両として狙い目だったりする。
但し、内装を含める装飾類はファミリーセダンとして、40代後半以上を想定して設定されている感が否めない。
しかし、Oさんはそうしたスタイルに感銘を受けたようだ。
「前から、ギャップのあるクルマが好きだったんです。だから、内装とかもおっさんっぽくして、それでドリフトできるクルマに造った感じですかね」
こうして、ベース車両探しからではなく、この車両との出会いから、必然的に自分の好きなスタイルに合わせて仕上げていくことになる。
バンパー
外装で、一番目を惹くのはワインレッド(110の前期だけに設定されている純正色の3P2ボルドーマイカ)と1D5シルバーマイカメタリックのツートン。
確かにチョイスこそ、おっさんくさい。しかし、まとまっていてエレガントにさえ感じるドリ車に見えるのは、所々純正を上手く使っているからだろうか。
後期バンパーを付ける為に、ヘッドライトも後期に変更。リップは後期オプションのTYPE2をセット。
110マークⅡは前期と後期で、ヘッドライトの形状が異なっており、後期バンパーのダクトにあるフィンは端まで伸びている。
バンパーについているコーナリングランプは、加工してフォグになっているそうだ。
サイドとリア
サイドステップは、フォーチュナサイドステップをワンオフ加工。サイズも純正と比べて違和感がない。
フェンダーは、大口径ホイールを入れるためにオーバーフェンダーにしている。フロントはN-STYLEの汎用オーバーフェンダー。
「リアは不明の汎用フェンダー。オークションで売ってるやっすいやつをパテ盛って流してる感じですかね」
リアバンパーは後期バンパー、そこに純正リアハーフを組み合わせている。ちなみにリアハーフは前期、後期の違いはないそうだ。
テールランプは、後期の寒冷地テールをセット。寒冷地テールは中央にバックフォグがついている(MARKⅡの文字下、赤色のレンズ部分)。
マフラーは「オークションで買ったよく分かんないやつ」らしいが、テールエンドがスライド式になっている。最近、ユーロ用のマフラーも、テールエンドはスライド式になっているメーカーが多く、自分好みに長さを設定できる物が多い。
撮影時は出して、走る時は戻すなんて使い方も出来るから便利だ。
エンジンルーム
ブリッツのエアクリ、前置きインタークーラーとエンジンはこれからといった状態だが、1JZが載っているだけにこのままでも十分楽しめるだろう。
ヘッドカバーを始めとする、エンジンルーム内の塗装はDIYによる。
エンブレムは「このクルマを買った時に室内に転がってたやつですね。よく分からないです」とフリーダムな回答がくすぐってくれる。
足元
車高調はクスコ。その他、テンションロッド、ロールセンターアダプター。キャンバーを付ける為に、110系と長さの違う100系のアッパーアームを流用している。
キャンバーはフロントだけが寝ているスタイルが好きなそうで、おそらくF:9°、R:4.5°程度との事。
その他、ドリフトする為に、必要なアイテムは一通りインストールされている印象だ。
ホイール
ホイールはWORK SEEKER SXの18インチ、10.5J-24の通し。深リムが好きで一時期、逆反りも履いたりしたが戻ってきたそうだ。
タイヤはフロントがピンソの225/40で、リアがトライアングルの225/40。
駆動系は、70スープラの5MTを110のパーツを加工して載せ替え、ORCの559Dメタルツインに2wayのデフが入っている。
室内
室内をのぞくと、いかにも走っているというパーツは、90の頃から使っているという不明のフルバケと7点式のサイトウロールケージ。
「これはもう完全に見た目ですね。前はガラスにスモークはってたんですけど、はがして見えるようにしましたね」
ロールケージは見た感じ、しっかりと組んであるように見えるが、完全に見た目重視と話す。
サンルーフは純正と思いきや、汎用の後付けで、ベバストサンルーフ。ルーフを切って室内の加工込みで20万程度だったそうだ。
助手席にはオートゲージのメーターがずらりと並ぶ。
ここまでは、通常のドリ車レビューなのだが、おっさん仕様と呼ばれる由縁はこれから説明したい。
純正オプションをDIGる
まず、室内のパネルはすべて木目に変更。ドアにあるウインドウのスイッチは、純正がなかったので後期の木目パネルを流用している。
レザーシートにはレースカバー。
一昔前、ファミリー温泉やパチンコ屋さんの駐車場に行くと、よく止まっていたような。または、どこかの会社の部長さんがタバコを吸いながら運転している姿が目に浮かぶ。
このスタイルでドリフトするって面白い。
助手席の足元のゴミ箱は「おっさんが使ってそう」という理由から、わざわざ探し回って純正オプションを購入。
同じく助手席のヘッドレストには、ゴミ袋を下げたりする為の荷物掛け(シートフック)があり、これも苦労して手に入れたそうだ。
その他、サンシェードや車外になるがコーナーポールも純正オプション。
「おっさんが使ってそうで、純正オプションが好きなんで、見つかったら手当たり次第に買ってる感じですかね」
ポリシー
普段は知り合いの走行会や、ミーティングに顔を出しているOさん。昔からドリフトをしていて、現在はサーキットを走っている。
どんな瞬間が楽しいかと聞くと「普通に町中を走ってる時が一番楽しいですね」と、本当かどうか分からないが、この仕様についてはポリシーを持っているのは本当なようだ。
「おっさん仕様も増えてほしいし、ツートンも流行らせたいですね。このクルマに乗ってる限りは追求していくと思います」
様々なクルマ遊びがあって、ドリフトシーンはフリーダムで楽しい。
この車両においては、“おっさんクルマに見えて、ドレスアップされたドリ車”というコンセプトの元に仕上げている。
また、オールペンやサンルーフ、深リムなど費用をかける所と、手を抜く強弱も良くトータルで評価できるクルマだ。
おっさん感
Oさんは、終始楽しませてくれる。これだけ笑いながらインタビューするのも珍しいが、Oさんが提案するおっさん仕様について聞いてみた。
「おっさん感としては、そこそこ出来上がってる感じですかね。もうちょっと欲しいのは、純正のオプションですね。純正のオプションってメチャクチャあるんですね。だから、それを揃えたい感じですかね」
110系といえば、比較的新しいベース車のイメージあるが、純正オプションについては手に入りにくいそうだ。
この仕様に関して、周りの反応はどういったものなのだろうか?
「うーん、よく言われるのは、こんな仕様見たことないとかですかね。気に入ってくれてる人もけっこういて、自分の見て、純正オプションを集め出した人もいるんですよね」
「でも買った時は散々ダサいって言われましたね。言われまくりましたね(笑)」
おっさんJDMは意外性と、その完成度に好評なようだ。ただ、女性ウケはあまりよくない様子。
「うーん、あまりいいって言われた事はないですね。例えば、レースカバーなんかは、何これ変なのって言われた事あります」
「何言われようと、これが俺の仕様だって感じですかね」
と締めくくってくれたが、Oさんの寝癖は早朝と変わらずだった。