ーーー イシカワさん、これって、もしかしてドリドレで当たったハチロク?
イシカワ:ああ、そうです、そうです。これ。その時の写真。ボンネットがめちゃくちゃ熱くてやけどしましたね(笑)。そりゃそうだよなって後で思ったけど。ハハハ。
ーーー 思い出した(笑)いつでしたっけ?去年でしたっけ。
イシカワ:そうそう。あの、これ、ボロボロでみんなゴミゴミ言うんすけど、僕はすごい気に入ってて(笑)。ボロいけどなんか可愛いっていう感じで。もう直すじゃ楽しくないから、パイプでやろうって思ってましたね。
ーーー 当てた後にそういう構想ができたんです?
イシカワ:元々、いつかやりたいっていう気持ちはあって。だけど、まぁ、なかなかタイミングないじゃないですか?だから、ぶつけた時についに始まったなっていう感じではいた。正直ちょっとワクワクもあったっすね(笑)。
ーーー ハハハ。なるほど。それで、何から手を付けたんですか?
イシカワ:あー、そうだな。ちょっと待ってください(スマホの画像を探す)。全然関係ないけど、これ気に入ってる写真。
ーーー あー、え?これ何してる所?
イシカワ:保管してる時に邪魔だったから、どかした時の写真です(笑)。なんか面白い絵ですよね。えーと、で、次は。次は、こうやって手伝ってもらって、グローバルジグっていう機械に乗せました。この緑色のやつ。これに載せると、その車の歪みとかズレが分かる。だいたい下回りは分かるんで。
ーーー ジグって、パーツとか同じ寸法のものを何個も作る時に使うあれですよね?
イシカワ:そういうこと。車のジグって感じ。パーツのジグだって、ようは位置出しじゃないですか。これもお腹の下のフレームで車がちゃんと真っ直ぐかとか、どこがどんぐらいずれてるかってわかるんですよ。
ーーー じゃあ、ある程度、修正機で直してジグに乗せてって流れですよね?
イシカワ:そう、それで、さっさと色々切っちゃいました。こんな感じで(笑)。ハハハ。前の方が歪んでて、ちょっと後ろの方までは波及してたけど、もう全部作るからいいやと思って(笑)
ーーー バルクヘッドあたりから前がないっていう感じですよね。フロアもないし(笑)。こっからどう進んでいくんですか?
イシカワ:実は、フロントミッドシップにしたくて。エンジンを後ろに下げて。重量物をなるべく真ん中の方に持っていこうと思って。
ーーー え?(笑)。また、すごい事考えてますね。
イシカワ:そう。まず、バルクヘッドの位置を後ろに下げるから、バルクヘッドからフロアの真ん中を切るってイメージですね。フロアを25cm切って、抜いちゃって、またくっつける。短くするみたいな。
ーーー なるほど、なるほど、25cm分が後ろにずれるんですね。
イシカワ:これも一気にやっちゃうとわけ分かんなくなるから、手間だけど順を追ってやってってるって感じですね。効率悪かったな。初めてだから難所。これでフロアの位置出しができたんで、一気に全部カットしてっちゃって。クオーターも取っちゃって。
でも、本当に別に明確なビジョンがあってやってるわけじゃないから、切りながら考えてってるっていう。
ーーー いつものやりながら考えるってやつですね(笑)。イシカワ流。
イシカワ:そうそう。それで何と言ったらいいんだろう。フロアと外観を切り離したって感じかな。モノコックだからフレームとボディとも言わないから。
ーーー もう、上下切り離しでいいんじゃないですか?(笑)。
イシカワ:そうすね(笑)。で、まずはフロアだけだと弱いから。サイドシルもなくなっちゃったわけなんですよ。サイドシルって車の中で強度で大事なところなんですけど、このペラペラのフロアにサイドシル的な角パイプをつけていきました。
ーーー じゃあ、これ、根幹となるフレームっていうことですね?
イシカワ:そうですね。ここが結構これから先の基準になってるな。これの寸法出しが地味に大変でした。こういう風に作っていった理由が、今回は86のボディでやってるけど、この先は違ういろんなボディを載せたいんですよ。
ーーー 前に聞いた例のアレですね、着せ替えっていうやつですね(笑)。
イシカワ:そうそう、ラジコンみたいな感じで。僕、あれなんですよね。こうやってシャーシ作るのも楽しいから好きだけど、どっちかっていうと車の外装いじるの好きなんですよ。プラモデルの外装いじるみたいな。毎回車体から全部作ってたらお金も時間もすごいかかって効率悪いじゃないですか。
だったらこうやってベースのシャーシ作っといて、側だけ着替えて遊べるっていう理想的な遊びができるんですよ。
ーーー その発想がね、面白い。ほんとラジコンですね(笑)。
イシカワ:ラジコンってそうじゃないですか。車体があって好きなボディ買ってのせて、ボディに飽きたら違うボディ買ってのせてってやるじゃないですか。実車でそれできたらいいなと思って。
ーーー うん、うん。確かに(笑)。
イシカワ:サーキット専用で本当に遊びで造れる車が欲しくて。それを作っていってるっていう感じですね。
ーーー ここからパイプ組みが進むんですよね?
イシカワ:ここからは、フロントセクションを造っていったんじゃないかな。フロント側のパイプフレームを位置出しして造っていくっていう感じですね。ただ、自分オリジナルの位置出しをしてるんじゃなくて。基本的に86のジオメトリーのまま、純正に基づいて。足周りは全部ついてるけど、フロアだけ下がってるっていう感じですね。
ーーー なるほど。あくまでホイールベースは変わらないって感じですね。
イシカワ:86の乗り味ってすごい好きで。それを変えたくなったんで。先に友達の綺麗な86からデータをもらっておいて、ストラットの位置も決まってたんですよ。その後はクロスメンバーをくっつけたんだな。左右のパイプとパイプをつなげるクロスメンバーをくっつけて。で、このストラットをつけたのかな。
ーーー 素人にも分かるように言うと車高調が付く土台ができたって事ですよね?
イシカワ:そうです。そうです。それで、次にRX-8のエンジンを使うんですけど。6速の。結構でかいみたいで。フロアトンネルもちょっと大きくするために切って、ストラット周りとかサイドフレームっていうのかな?その辺りも同時に進めていってるって感じですね。
ーーー リアにホイールが付いてますけど、これは元々の足回りですよね?
イシカワ:リアはそのままです、元々の足回り。ただ、落ちがあって、最終的にはその辺も全部造っちゃったんですね(笑)。リア回り、足回りの付け根を結局、加工して造っちゃいましたね。最後の方で。
ーーー 位置は変わらないけど造り直したって事?
イシカワ:造ってるうちに、だんだん欲が出てくるじゃないですか(笑)。これもやりたいな、あれもやりたいなって。ボディを被せた時に、カッコよければいいって最初思って始めたんですけど、造ってるうちに、段々このフレームだけ、ボディ被ってない状態でもカッコいい車にしたいなって思い出しちゃって。
ーーー なるほど、ここで作戦変更になるんですね。
イシカワ:バイクとかってフレーム単体で見て結構美しいじゃないですか。そういうのまで意識しだしちゃって、どんどん。強度も出しつつ軽くしつつみたいなのも考えたりして。
このホイールもWEDSさんの試作品付けさせてもらってるんですけど、このタイヤホイールを付けて、フレームがカッコよく見えるっていうのをイメージしながら作っていったっていう感じですね。多分、このホイールじゃなかったらまたちょっと違う感じになってたと思う。
ーーー これサイズはいくつなんですか?
イシカワ:275/35-15っていう、なんかすごい珍しいサイズ。なかなかないサイズですね。なんか昔のレースマシンみたい。レトロ感といい。
ーーー このパイプのデザインはどうやって設計したんですか?
イシカワ:マスキングテープを大量に使ってですね。あっちから走らして、こっちから走らして、何通りも何通りもその雰囲気を見て。これがまたやってみると面白いもんで、クロスの仕方とか、三角形の具合とかがちょっと変わるだけでイメージ全然違うんですよ。楽しかったですね。この辺は。
四十過ぎのおっさんが一人で、ずーっとマスキングテープ貼って、剥がしてをくり返してました(笑)
ーーー このパイプの曲げとかもイシカワさんやってるんです?
イシカワ:そうです、そうです。こういうのやりたかったし、僕いつか椅子を作りたいんですよ(笑)。話が一気に飛んじゃうけど。椅子を作る人やりたくて。それ用のパイプベンダーを持ってるんですよ。このパイプの取り回しもこれが合ってるかも分からないですよ。やったことないし、教えてもらったわけじゃないから(笑)これがカッコいいかなって感じ。
ーーー なるほど。で、ここからけっこう進んで、だんだん車っぽくなってきてますよね。
イシカワ:そうですね。次にエンジンメンバー。純正のメンバーを軽量化したり、ラックの位置を下げたり。あと、メンバー周りを作り出しましたね。足回りを付けたり。ドリフトだから逆関節にならないように、ラックの位置ずらしたり。
で、ブレーキを付けてハンドルを付けて。ハンドルとかもお金かけたくないから純正のやつを加工して。“志しは高く、課金は低く”って造ってるんで。
ーーー なんか、名言じゃないですか、それ(笑)ハハハ。
イシカワ:ハハハ。お金かけたら海外の人とかはいくらでもスゴイのを造ってるから。こっちはどれだけ楽しくお金かけずやるかっていう。面白いもの。楽しいものを造るかっていうことを考えて(笑)。
それから、これにのせるボディを軽量化しましたね。もう強度関係ないんで。切り刻んですんげぇ軽くなりましたよ。
ーーー いや、これは軽そうですね。ラジコンで言うとボディ部分ですよね?
イシカワ:そう、そう。
ーーー ちなみに、ここまで車高が低いと、全長が短い車高調じゃないと駄目ですよね?
イシカワ:そうなんです。あの、すっげぇ短いのが欲しくて。AE86の中で一番短い車高調を作ったんじゃないかな(笑)ストラットの位置を下に下げてるんですよ。ボディを下げて付けたいから。極端に短いのができたな(笑)。
ーーー 見るからに短いですね(笑)。
イシカワ:この後に塗る。一旦塗る。気持ち的に一回綺麗にしたくて。もう一回塗るの前提なんですけど。ここは友達に手伝ってもらいましたね。
ーーー 色入ると一気に雰囲気出ますね。これ、ほぼ今の形ですよね?
イシカワ:でも、ここからボディの位置というか高さ。屋根を低くしたくて。最初、サイドシルがちゃんとあったんですけど。だいぶ切っちゃって(笑)。だけどまだちょっと下げれそうなんですよ、ボディの位置。何が限界かっていうと、ルーフに頭あたっちゃう。
それが限界なんですよ。ちょっと隙間もないと、もし横転した時とか怖いし。
ーーー そこまで下げるんすね(笑)そういえば、最終的にリア周りも造ったんですよね?
イシカワ:無加工でいくって思ってたんですよ、リアは。だけど、86ってリアの車高が全然下がらないんですよね。構造的にね。でも、僕の場合は何でもありだなと思って。フレームとかも全部切っちゃって、後ろの足回り下がるように加工したって感じですね。フロアとかも余分なもの全部切ったら軽くなったんで。軽くなった分、また補強しようと思って、今またフレームの補強を入れてる最中っていう感じですね。
ーーー このバーリングプレートは何なんですか?
イシカワ:これはもう、リアのコントロールアームがバンザイして、ホーシングとか干渉しちゃってたから、逃がすために、フロアの上の方にブラケットを作ったっていう感じですね。
ちなみに、86ってよく等長リンクって言って、上下のコントロールアームの長さを合わせるっていうのをやるんですけど、僕の周りハチロク乗りがいっぱいいるんですけど、なんか等張リンクとドリフトあんまり相性良くないってみんな言ってたから、上下で長さが違います。こっちの方がトラクションが良いらしいです。
ーーー じゃあ、現状は前後の足回りができたって所ですね。
イシカワ:とりあえず今ここまでで一旦終了。ここから長野に持っていって、山田さんという方にロータリーエンジンのせてもらうっていう感じです。
ーーー そうすると、今月末に長野でFIXWELLで展示するじゃないですか?その時はエンジンのってる?
イシカワ:分かんないです(笑)。山田さんには、本当こんなに付き合わせて申し訳ないから、ストレスならん程度に適当にやってくれって言ってやるから(笑)。
ーーー でも、この状態でも実際に見るの楽しみですね。しかし、色々話そうと思ってましたけど説明してもらっただけで今回の記事終わりそうです(笑)。
イシカワ:そうなんすね(笑)。本当、あれっすよ、これ、こんな風に話させていただいたんですが、未経験者が勘でやってるだけなんで。参考にしないでください(笑)。
なんか、全然これが合ってるかなんて自信が全くない。ただ、なんとなく見た目カッコいいやつできてきたなーって感じです。
ーーー だけど、紛れもなく夢のある遊びですよね。
イシカワ:でも、そういう遊びがしたくてやってるっていうだけかなぁ(笑)。
ーーー 今からエンジンがのって、ミッションがついて、ガワモンがついたら完成?
イシカワ:そうですね。何を完成というか難しい話ですけど。そんぐらいでドリドレに持って行きたいなって感じかな。
ーーー 本当楽しみです、またやりましょうよ。この記事の続き。
イシカワ:やりましょう!ぜひぜひ。